研究概要 |
西表産海綿Cinachyrellaに含まれるレクチンIRI35の精製を行い、ガラクトース結合型の16kDのタンパク質であることを明らかにした。IRI35は培養細胞の発現グルタミン酸受容体の脱感作を阻害することで電流を増強した。この活性は培養神経細胞や脳スライスでも観測されることを見出し、ガラクトース結合型レクチンが神経調節において重要な役割を担う可能性を示唆した。新規ペプチドAculeineは45アミノ酸残基とN-末端にある長鎖ポリアミンを含む構造未知のユニットから構成される。今回AculeineAとBの精密質量分析を行いその分子式から両者とも3つのジスルフィド結合を持つことがわかった。また海綿の抽出物にAcu BのN-末端と類似する構造を持つポリアミン化合物を見出しその分離と構造解析を行った。その結果新規のポリアミンを含むトリプトファン誘導体を見出した。この化合物の分子式はAcu BのN-末端に推定される分子式と完全に一致した。海綿やホヤ等の海洋生物の水抽出物は神経に作用する化合物の宝庫であることが示唆されたのでさらにその探索を行ったところ、パラオ産海綿Cribrochalina olemda,Amphimedon vilidis,Haliclona sp.より新規のイソグアニン類を見出しその構造とシナプス変調作用について詳細に検討した。その結果、新規化合物として単離した1,9-ジメチル-8-オキソイソグアニンが抑制性神経伝達を著しく阻害すること、しかしGABA受容体に直接作用しないことを見出した。この化合物は、α-アドレナリン受容体、セロトニン受容体オピオイド受容体等に弱い親和性を示したことから多様な受容体に作用することで神経調節機構を変調する作用を示す可能性が示唆された。
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