研究課題
新規ペプチド毒アーキュレイン(ACU)の構造解析:ACUはアミノ酸残基45個からなる海綿Axynissa aculeata由来の新規ペプチドであるがN末端の残基が高度な翻訳後修飾を受けており、その構造は不明である。また、分子量が大きく(5000-7000)直接NMR等で構造を決めることが困難であるため、構造決定は挑戦的な課題である。本研究ではこの構造決定に挑むため、機器分析と分子生物学的手法を組み合わせて構造解析を行った。今回、超高分解能質量分析技術の導入でペプチドそのものの精密分子量測定を行い、ACU-AとBの精密分子量の測定を行った。さらに、抽出物にACU-BのN末端部分に相当すると思われる新規化合物を見出したので、それをプロトアーキュレイン1072と命名し、その構造解析を行った。その結果、トリプトファンにポリアミンが結合したこれまでに無い構造を有する化合物であることがわかった。これらの結果を総合してACUの分子式が決定された。すなわち、アーキュレインAの分子式はC298H518N84069S6、BのそれはC252H413N69069S6となり、これらの化合物に含まれる6つのシステイン残基が全てジスルフィド結合を形成していることが明らかとなった。シナプス受容体調節作用を持つレクチンの構造:海綿Cynachyrellaから分離されたレクチン(CchG)と命名には発現グルタミン酸受容体の脱感作を阻害する興味深い活性が見られた。そこで、レクチンのアミノ酸配列を決定するためにN-末端構造解析ならびにcDNAクローニングを行った。その結果、CchGはガレクチンファミリーに属するタンパク質であることが示された。この結果は動物ガレクチンそのものにもグルタミン酸受容体を調節する活性があることを示唆する。そこで発現ヒトガレクチン1をグルタミン酸受容体に作用させたところ、活性が確認された。
2: おおむね順調に進展している
申請書ではレクチンのクローニングおよびアーキュレインの構造解析を行うことを目標としており、それらは順調に達成されているが、アーキュレインの構造にはこれまでの天然物にはない特異な構造が含まれるので、その構造決定には更なる研究の進展が必要である。レクチンの生理活性はこれまでに知られていながった動物ガレクチンの脳における作用を示唆する重要な発見と位置づけている。
アーキュレインの構造は少なくとも一つの平面構造の決定を目指す。ガレクチンはその立体構造の決定および生理作用の研究を進展させる。これら以外の活性物質の探索を引き続き行う。
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Chembiochem
巻: 14 ページ: 2191-2200
10.1002/cbic.201190063