本年度は一般大規模法人調査とJA出資法人調査の二つを実施した。両調査を通じて、日本農業における法人経営の到達点が明らかになりつつあるといってよい。ここでは前者の成果を中心にまとめておきたい。 大規模法人調査では2000年以前に設立された歴史の古い法人が調査対象として取り上げられており、法人農業経営の到達点をみる上では格好の素材であることが確認された。 (1)経営収支構造としては、2007~09年度の3年間で経営の75~80%が黒字、20~25%が赤字という実態が初めて統計レベルで確認された。また、07~08年に改善されていた収支は08~09年度に悪化し、世界食料危機とリーマンショック後の景気後退による影響が法人経営にも鋭く及んでいることが判明した。 (2)企業形態別には赤字経営の割合は株式会社が10%未満、非法人10%程度、農事組合法人20~25%、有限会社25%程度という格差的な構造の存在が明らかになった。 (3)作目別には米・麦・大豆作という土地利用型農業が全体の平均的な利益率3.5%を上回る5.0%水準を確保しており、法人経営に関しては一般的に言われている土地利用型農業の経営状態の劣悪性という実態とは異なる現実が存在していることが明らかになっている。 (4)常勤役職員数や従事者数といった労働力の規模の指標と利益率の間には明白な正の相関関係が検出されており、通常言われている土地利用型農業における規模の経済の非発現という評価とは異なる実態が解明されている。これは生産費調査では大規模な経営体の統計が与えられていないことが重要な要因であることが示唆されるところである。
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