研究課題/領域番号 |
22380118
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷口 信和 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20115596)
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研究分担者 |
安藤 光義 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (40261747)
宮田 剛志 高崎経済大学, 地域政策学部, 講師 (70345180)
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キーワード | JA出資農業生産法人 / JA直営農業経営 / 戸別所得補償制度 / 集落営農 / 企業参入 |
研究概要 |
本年度の最大の研究成果は従来のJA出資法人研究での重要な論点である、経営収支赤字問題について画期的な分析結果を提示したことにあるといってよい。 すなわち、第1に、JA出資法人設立当初の赤字を決して恐れる必要はないということである。むしろ、設立当初は赤字経営かた始まるのが現実であって、3~4年後には大多数の法人が黒字へ転換している。これは設立時には経営規模に比較して過大な設備・機械投資、人員確保が普通だから、赤字は避けられないが、初期投資規模(ファームサイズ)に経営規模(ビジネスサイズ)が追いついていくことにより、徐々に黒字化が達成されるという現実を示したものに他ならないからである。 しかし、第2に、歴史の長い法人での赤字経営の固定化は、一方で極めて条件の悪い経営を余儀なくされるような設立環境にあったこと、他方でその後に黒字化に向けた適切な措置が取られていないといった問題が潜んでいることが予想されるところである。 したがって、第3に、現実の多様な法人で示される赤字化や黒字化の複雑な動きは、多様な設立年度の法人が合算された結果として示されるものに過ぎず、2000年以降の赤字化の進展も法人の新設が急激に進んだことに影響された側面が大きいとみるべきである。反対に、農業の交易条件が悪化した2008~09年度にJA出資法人の黒字化が進んだようにみえたのは、05~07年度に多数の法人が設立され、それらがたまたまこの時期に黒字転換を果たしたことに基づいているとみるべきなのである。念のためにいえば、農協協会調査による一般農業法人の場合は91.5%が、1999年までに設立された「歴史の古い」法人がほとんどであって、経営的には安定した状態にあるものが中心である。そうした法人だからこそ、08~09年度における農業の交易条件の急激な悪化が法人の経営収支に反映されて、この時期に赤字化が進んだとみることができるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内に関する研究で画期的な研究成果が得られただけでなく、中国の調査を通じて旧国営農場からの企業転換についての全く新たな知見が獲得されつつあり、農業法人研究における新たな峰が築かれつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定に沿って適切に進めれば、目的とした成果が得られるものと期待している。
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