研究課題/領域番号 |
22380118
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
谷口 信和 東京農業大学, 農学部, 教授 (20115596)
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研究分担者 |
安藤 光義 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40261747)
宮田 剛志 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (70345180)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業法人 / JA出資農業生産法人 / JA直営農業経営 / 担い手育成 / 集落営農 / 企業参入 / 国際比較 |
研究概要 |
本年度の研究は以下の5点を課題とした。①現段階の農業構造問題の特徴を鮮明にし、JA出資法人やJA直営経営が一層の設立を求められている現実を浮き彫りにする。②JA出資法人と直営経営の設立状況の最新の数字を把握し、それらの設立の意義を再確認する。③直営経営の実態調査を行い、特徴を明らかにする。④JA出資法人が直面する課題に沿って、取り組みの諸相を明らかにする。⑤JA直営と出資法人の関連についての検討を行う。 こうした問題意識から、現段階の農業構造問題の特徴を、①大規模な担い手経営すら脱農・離農が危惧される実態が各地で生まれつつあり、耕作放棄地の大量発生という危険に直面していること、②昭和一桁世代の完全リタイアが進む中で、従来型の担い手育成では間に合わない事態が発生する中で、JA出資法人や直営への期待が急速に高まる構造にあること、③新規就農構造が自営型から雇用型にシフトする中で、JA出資法人などの新規就農研修事業の意義がますます拡大しつつあることを指摘した。 この上で、以下の諸点を確認した。①2010年段階ではJA直営経営の開始数はわずかだったが、その後、各地のJAで直営の検討が進み、実施に移るJAがあいついだ。②全中・農水省の調べでは直営は2012年10月1日時点で実施済み39JA,実施予定6JAとなっているが、土地利用を行うものは34JAとなっている。③2012年度の調査はこうした直営経営のうち規模の大きなものを個別実態調査する一方、JA出資法人が直面している課題や到達点を明らかにした。④こうした中で、直営だけでなく、JA出資法人も着実に増加していることが確認された。⑤不完全な現在数調査ではあったが、JA出資法人が366法人、直営が34JAで確認され、両者合わせて400となり、400の大台に乗った模様である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は元々平成22年度から平成26年度までの5年間にわたる、やや長い研究期間で取り組むことにしたが、それはこの期間が日本農業の構造変動に極めて重要な時期にあたり、そこでの構造改革の成否が日本農業の未来を決する重要なポイントになるとの問題意識からであった。 こうした観点からすれば、構造変動は予想された以上のスピードで進みつつあり、我々の研究が十分には追いついていないという意味において予想通りには進展していないということであって、研究そのものに即していえば、順調に進んでいる。 とくにJAの直営農業経営については研究代表者らの予測を超えて現場での取組が進んだという現実があるが、一方ではそれらの少なくない部分が従来の家畜の預託事業の直営化といった性格をもったものであり、直営の土地利用型農業経営が大規模かつ広範に展開しているものではないと判断される。他方では土地利用型農業に踏み出した直営農業経営の少なくない部分が経営の安定=黒字化を待ってJA出資農業生産法人に移行する現実や計画があり、労務管理を中心としたJA直営型農業経営の難しさという以前から指摘してきた理論的な問題が顕在化しつつあるということもできる。 また、集落営農については内実をともなって設立されたものも、いわゆる枝番方式で補助金の受け皿組織として設立されたものについても、より大規模で持続性のあるものへの組織再編が各地で進む動きがみられる反面、TPP参加などの新しい動きの中で、将来の農業への展望が描ききれない現実の重さにたじろぎ、現状維持に止まっている実態が支配的である。こうした実態の全体像を丁寧に描くことが求められている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、研究そのものは順調に進んでいるため、当初計画通りに進めることにしたい。とはいえ、現実の構造再編が当初の予想を超えて急速に進みつつあり、幾分、研究計画を前倒しして進める積もりである。 本年度はJA出資法人・直営農業経営に関して全国調査を実施する予定であり、そのためにやや特別の体制を取らねばならないと判断している。これまでの協力研究者を分担研究者に格上げしたのはそのためであり、分担研究者の間の連絡を密にすることが重要になっていると判断している。
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