第1に、秋田県内において活動する全ての集落営農組織に対して配付した企業的経営との連携実態と意向に関するアンケートを回収し、分析を行った(配付数600、回収率65%)。他組織との連携実態をみると、情報交換については全体の3割の組織で行っていた。また2割程度の組織で作業受委託、機械共同利用を他組織と行っており、そうした組織は自己完結的に営農を行っているわけではなく、「開かれた」「支え合う」組織であることが示唆された。また1割の組織で労働力融通も行われていた。その一方、非農業関係者をはじめとする企業的経営とのつながりを持つ組織はほとんど存在せず、そうしたネットワークをいかに構築していくかが課題であった。 第2に、秋田県北部において集落の範囲を越えて大規模な営農を行う有限会社Aの実態を調査し、経営発展のポイントを整理した。実態から見えてきたのは、(1)合理的な規模拡大、(2)品質の良い農産物を消費者に届けるための高品質安定生産体制の構築、(3)工場管理手法を経営に取り入れムリ・ムダを排除、であった。また有限会社Aでは、(1)枝豆産地の牽引役、(2)担い手不在集落のカバー、(3)地域に就業の場を提供、といった地域貢献を行うとともに、他地域で活動する農業者・組織と農地情報のやりとりや交換分合を行い、合併市町村レベルでの広域での円滑な営農継続・発展を目指していた。このように、自己の利益だけを優先せず、地域との共生・連携を図りながら規模拡大を進め、地域の財産である農地を保全していくことが、土地利用型農業の担い手に求められていることが示唆された。
|