研究概要 |
<具体的内容> 研究課題A:傾斜キャピラリー・バリアによる雨水ハーベスティング技術の開発 1)昨年度に農学部圃場に造成したキャピラリー・バリア地盤(斜面)において降雨実験を実施し,キャピラリー・バリアによる雨水浸潤遮断機能を明らかにした。斜面の水平長は6m程度を実現できた。 2)雨水ハーベスティング技術への展開にあたり,雨水浸潤遮断機能が発揮される範囲/領域(限界長)が地盤構造の規模を決定する重要な設計因子となる。本年度の実験において,キャピラリー・バリア構造の設計式として限界長の推定式を特定することができ,また具体的に2.5m程度の限界長を測定することができた。 3)研究課題B:平面状キャピラリー・バリアによる節水かんがい法の開発 4)ビニールハウス内に造成したキャピラリー・バリア地盤(水平圃場)において,春季および夏季の2シーズンで植栽実験を実施した。これにより,蒸発散の大きい過酷な条件下におけるキャピラリー・バリアの作物生育に及ぼす効果を明らかにすることができた。 5)礫層は,その下層の地下水からの水分供給と塩分供給を遮断する。ビニールハウス内圃場に模擬地下水装置を設置し,地下水および塩分の動態を測定することにより,塩分集積に対する対策工法としての可能性を明らかにした。 <意義,重要性> 研究課題Aで測定した限界長2.5mは,おそらく,国内外で最長のものであり,かなり実規模への展開が可能となる値である。雨水ハーベスティングのみならず,たとえば,放射性汚染物質の長期保管のための地盤構造物としての適用可能性が高くなってきた。研究課題Bでえられた塩水上昇遮断機能は,想定できていたものであったが,実際に実験結果として確認できたことは画期的なことと考えられる。塩分集積対策としても効果のあるかんがい法としてきわめて現実みを持ったものとなってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度,研究課題Aで測定した限界長2.5mは,おそらく,国内外で最長のものであり重要な結果であるが,実規模まで展開するとなると5m以上,可能なら10m程度を確認する必要がある。限界長をコントロールする材料因子・構造因子はほぼ明らかにできたことから,これらの長大な限界長を達成するため異なる材料・構造条件で実験を継続して進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)傾斜キャピラリー・バリア地盤における実規模適用レベル(5~10m)の限界長を測定する。これにより,特定した限界長の推定式の実務性を明らかにし,キャピラリー・バリア地盤構造の設計法を開発するとともに,雨水浸潤遮断機能に着目して,キャピラリー・バリアを利用した放射性汚染物質あるいは一般廃棄物の盛土方式による貯蔵保管工法の展開を図る。 (2)塩分集積を防止しかつ節水が可能な優れた機能を持つかんがい農法を,国際誌への論文公表により広く周知する。合わせて,具体的にキャピラリー・バリア地盤を造成するための施工機械等の仕様を定める(可能なら特許申請)。
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