| 研究概要 |
本研究では、塩分集積の発生位置を精度良く同定し、発生要因を分析して乾燥地灌漑農業の持続性に寄与する対応策を検討する。そのために、3つの具体的目標を設定している。(1)衛星画像とGISおよび地温情報を用いた新しい塩類化リスク評価方法を開発する。(2)水の移動経路と蒸発による消費を組み込んだ精度の高い最適灌漑用水配分計画法を開発する。(3)塩類化要因を分析し、用排水システム管理の改善策を提案する。この目的に向けて、平成22年度は以下のとおり研究を実施した。(1)対象地域を内蒙古河套灌区に設定し、内蒙古農業大学および河套灌区管理総局との間で研究組織と研究計画を合意した。(2)用排水路水を組織的に採水し、陽イオン組成と水の安定同位体比を測定した.これから、各排水ブロックの洗脱効果係数と蒸発率を推定した。(3)塩分収支、計画作物の必要灌漑水量を制約条件とし、取水量の最小化およびNa排出量の最大化を目的関数とした線形計画による最適用水配分計画法のプロトタイプを作成し、運用した。その結果、取水量を削減するブロックと削減量を定量的に特定できた。(4)塩類化リスク地の推定方法について、2つの方法でアプローチした。(1)土壌カラム試験により、土性と含水比の異なる土壌からの蒸発量と表面温度の関係を測定した。これに熱収支式を適用して、対照地との最高地表面温度の差から測定地の蒸発量を推定する式を作成した。これをMODIS画像から得た地温分布を用い、蒸発量分布を推定した。(2)衛星画像から蒸発量を推計するモデル式を立案し,推計精度の検証を行い,実用可能であると判断された。モデル式により,河套灌区全域の蒸発量を推計し,推定結果は概ね良好であると判断された。最後に蒸発量に加え、NDVI、NDWI、アルベドなどの7つの説明変数を用いて、ロジスティック回帰分析を行い,塩類集積地の判別が可能であるとの知見を得た。
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