両親媒性物質として最も多量に使用され,環境中に放出されているアニオン性界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて実験を行った。土壌は,負荷電を持つ厚層多腐植質非アロフェン質火山灰土を用いた。 吸着実験により,SDSは,疎水性相互作用により吸着し,短時間に分解反応が起こることがわかった。DBSは,pHが高いほど吸着量が少なくなった。これは,pHが高いほど土壌の電荷量が大きくなり,土壌とDBSの間の電気的反発力が増大して吸着力が弱くなったためである。また,DBSは,電解質濃度が高くなるほど吸着量が大きくなった。これは,電解質濃度の増加による土粒子表面近傍の電場遮蔽効果により,土壌とDBSの間の電気的反発力が減少して吸着力が強くなったためである。DBSを土壌に添加して3時間後と24時間後の吸着・分解量を比較したところ,24時間後の方が少し大きくなり,分解反応が生じていることが確認されたが,その差は大きなものではなく,土壌に吸着したDBSは,分解をある程度抑制されることがわかった。 SDSの土壌浸透実験を行ったところ,臨界ミセル濃度以下では,初期に若干の流出が認められるものの,その後の流出は抑制され,土壌中で吸着分解されることがわかった。臨界ミセル濃度以上では,電気的反発力の影響により,迅速に土壌中を流出することがわかった。DBSの土壌浸透実験を行ったところ,濃度に関係なく,吸着実験で得られた吸着量に対応して,流出の遅れが認められた。DBSでは,分解による流出の減少は認められたが,顕著な影響ではなかった。 SDSは,土壌浄化が容易であるが,DBSの土壌浄化法は,更なる検討が必要である。SDSは,臨界ミセル濃度以上で移動しやすく,それ以下になると分解されやすいため,汚染土壌の洗浄浄化剤として,効率的であることがわかった。
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