研究概要 |
中温メタン発酵と高温メタン発酵における耐性菌低減効果を比較したところ、発酵開始後10日目までは中温発酵の方が高い低減効果が得られた。一方、10日目以降は高温発酵による高い低減効果がみられたことから、メタン発酵の安定性が耐性菌減少に影響することが示唆された。また、高温発酵開始後20日目でもSM耐性菌が検出された。一般的に、中温発酵より効果が高いとされている高温発酵による病原性微生物処理においても効果の低い菌の存在が報告されていることから、メタン発酵により完全に処理できない菌が存在する可能性が高い。家畜糞尿におけるリスク低減手法は、メタン発酵だけでは不十分な場合があり、より確実な低減手法を加える必要もあることが示された。 A牧場、B, C農場の家畜糞尿を対象としたメタン発酵消化液に対し、電気化学処理を行った。全耐性菌が電気化学処理時間とともに減少した。特にOTC, AMP, VCM耐性菌は効果が高く、50分間の反応で検出限界以下まで減少した。電気化学反応によって,糞尿中に残留する塩化物イオンから次亜塩素酸等の殺菌力のある物質が生成し,死活化に寄与したと考えられる。一方で、SM, CEZ耐性菌の低減効果は低かった。さらに、電気化学処理のみおよび2段階処理による耐性菌低減効果を比較したところ、多くの耐性菌が2段階処理により、短時間で処理可能となったが、SM耐性菌は2段階処理において効果が低下した。2段階処理は耐性菌処理に有効であるが、一部効果が低く、リスクの高い耐性菌の存在が確認された。特に、一部の農場の乳牛糞尿を対象としたメタン発酵-電解酸化2段階処理では減少率が17.9 %と非常に低かった。これは生物学的処理および物理化学的処理では完全に減少させることができない可能性が高く、リスクの高い菌であることが示唆された。
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