研究課題/領域番号 |
22380138
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内野 敏剛 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70134393)
|
研究分担者 |
田中 史彦 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30284912)
小出 章二 岩手大学, 農学部, 准教授 (70292175)
|
キーワード | 超微細ミスト / 青果物 / 高湿貯蔵 / 光触媒 / 殺菌 / 青果物品質 |
研究概要 |
超微細ミスト(ナノミスト)発生装置と冷凍機の連動制御により湿度を一定に保つことは困難で、冷凍機による水蒸気の凝縮を低減するためのエバボレーターの温度制御は冷凍機の基本設計を変更する必要があることが明らかとなった。 昨年度の研究結果から、通常の加湿に用いられる超音波加湿器によるミスト(超音波ミスト)に比べ、ナノミストの青果物鮮度保持効果が高いことが判明したが、ナノミスト発生装置の構造的特性からイオンの発生する可能性が考えられたことから、ナノミスト、超音波ミストの発生イオン量の測定を行い、前者の負イオン発生量が多いことを見出した。この結果はナノミストの鮮度保持効果のメカニズムを示唆する興味深いもので、さらなる研究により実証されれば、学術的異議は大きい。 浮遊微生物制御については、Penicillium、Pseudomonas、Salmonera属菌を用いて光触媒殺菌の基礎的な試験を実施し、次の知見を得た。(1)300~400nmのUV-A領域の紫外線(光触媒の励起に用いる)はPs.oleovolans、S.entericaに対しては殺菌効果が確認された。(2)UV-Aの強度により殺菌効果は上がるが、OHラジカルの発生量は飽和する可能性がある。(3)絶対湿度と処理温度が高いほどOHラジカルの発生量は増加し、殺菌効果が高まる傾向が見られた。(4)Penicillium属の芽胞はUV-A、OHラジカルの両者に耐性がある。これらの結果は光触媒殺菌の実用化に当たり、有用な示唆を与える。 昨年度作成した電気集じん装置を円筒状に改良し、施設内塵埃を用いた集じん測定を行った結果、オゾンを発生させない条件でバクテリアを99.95%、カビ・酵母を100捕集可能であった。次に、水中チタン光触媒インピンジャー法を用いて殺菌に関する基礎的試験を行った結果、施設内塵埃由来の微生物を短時間で滅菌する可能性を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノミストの青果物への鮮度保持効果はほぼ明らかになり、光触媒による施設内の浮遊微生物制御に関しても基礎データの取得が終わり、実用機に近い装置による実験を計画中である。また、字数の関係で研究実績の概要から割愛したが、CFDによる貯蔵庫内の温湿度・風速分布予測も、湿度以外は予測可能な状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の概要に記載したとおり、冷凍機とナノミスト発生装置の連動による凝縮の低減は困難であることから、今後はナノミストの鮮度保持効果と浮遊微生物制御、並びにCFDによる貯蔵庫内の温湿度と風速分布の予測に焦点を絞って研究を推進していく。また、新たにナノミストの鮮度保持の作用メカニズムの要因として負イオンが浮上したことから、さらに厳密なイオン測定と湿度とイオンの効果を分離した実験を行い、ナノミストの鮮度保持効果の裏付けを行っていきたい。
|