超軟弱菜果であるイチゴは、流通時に押し傷や擦り傷等の物理的損傷が発生し易い。イチゴの流通性評価指標として果実硬度が挙げられるが、果実硬度測定は破壊試験であるため実際に生産および流通の現場では利用されていない。本研究担当者はイチゴ表面からの反射光を分光分析することによって、非接触で果実硬度を推定する研究成果を有している。本研究では、本研究担当者の研究成果を基盤に、イチゴ生産流通過程において生じる物理的損傷の位置および損傷程度を、イチゴの表面反射光スペクトルイメージング技術を用いて高速に且つ高精度に検出・推定する技術の開発、イチゴの物理的損傷程度及び被損傷部位の経時的変化を把握し、物理的損傷の生じ難さ(損傷耐性)を数量的に表現する基盤理論の形成を目的としている。 H22年度は、流通時にイチゴが曝露する振動・衝撃などの物理的損傷発生要因データおよび温度・湿度・呼吸量などの流通時保蔵環境データを複数の輸送経路で把握し、損傷発生状況について現状を把握した。また、室内実験において損傷有無による呼吸量及び内部品質の変化を把握し、軽度の損傷では呼吸量及び内部品質に大きな変化が生じないことを把握した。また、近赤外域(波長900~1700nm程度)を撮影可能なInGaAs素子カメラと近赤外域分光器を導入し、イチゴの全面反射光スペクトル情報取得装置の試作を開始した。これに高感度近赤外分光器を組み合わせてイチゴ全面ハイパースペクトル測定システムを構築する。さらに、イチゴに一定の物理的損傷を与え、その損傷位置および損傷程度と損傷部位におけるハイパースペクトルデータとの関係から、非接触・非破壊で物理的損傷の位置および損傷程度を定量化する計測システムを構築して行く。
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