研究課題/領域番号 |
22380142
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
井上 吉雄 独立行政法人農業環境技術研究所, 生態系計測研究領域, 上席研究員 (40354013)
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研究分担者 |
石塚 直樹 独立行政法人農業環境技術研究所, 生態系計測研究領域, 主任研究員 (20414500)
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キーワード | マイクロ波 / イネ / 後方散乱 / SAR / 発育形態モデル / 多周波 / 水田 / 衛星画像 |
研究概要 |
本研究は、衛星SARセンサ等による観測によって昼夜.天候によらず適時に作物・農地情報を評価するための斬新な遠隔評価技術の開拓を目指している。そのため、本年度は以下のような観測ならびに解析を進めた。 1.Xバンド、Cバンド等の高解像度新規SAR波センサによる観測データおよび地上データの収集整備 観測サイトにおいて、地上解像度が1mレベルの高精細度で画像計測が可能なXバンド(9.6GHz)およびCバンド(5.75GHz)の衛星SARセンサを用いて、約100km2程度の農耕地を選定して画像計測を行った。また、衛星観測と同期して、観測域内の多様な作物・圃場を対象として、作物の量的・形態的データや農地条件を、統計解析に耐える多数の地点において取得し、良好なデータセットを整備した。また、窒素濃度、光合成特性等生理的な情報の広域的評価、ならびにこれらの特性のマイクロ波データとの対応関係を解析するため、SARセンサによる多周波・多偏波データに加え、1m程度の地上解像度をもつ衛星センサによる同期的な観測を行い、光学波長域のデータセットを取得した。 2.統計解析、散乱プロセス物理モデル、作物発育形態モデルを用いた信号データの解析 これまでに収集整備したデータの一体的な解析を進め、散乱に関与する群落特性(量・形態・水分等にかかわる多数のパラメータ)や農地管理や表面状態に対する、X、CバンドのVV、VH、HH各偏波における後方散乱係数の関係と感度特性を明らかにした。特に収量性の評価に有効なバンド特性等が見出された。新たな農業情報計測に道を開く可能性がある。また、任意の生育段階のマイクロ波センシングデータと群落特性の関係の解析に有用なマイクロ波散乱プロセスに関する物理モデルならびにイネの発育形態モデルの応答特性を評価した。なお、研究成果は広く内外の学会等で公表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規マイクロ波センサによる観測信号およびそれに同期した作物形質の貴重なデータセットの整備が進んだ。また、その基礎的解析がおおむね順調に進み、稲の穂の重量やバイオマス等の広域評価の基礎となる有望な知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
高解像度の新規衛星SARセンサによる水田地帯の観測、ならびにそれに同期した地上での調査データの収集を引き続き進め、後方散乱係数、および作物の量的・形態的データや栽培管理実態に関するデータセットを取得する。また、散乱プロセス物理モデルや作物発育形態モデルを用いた解析を進め、群落特性(量・形態・水分等にかかわる多数のパラメータ)や作物種や農地管理状態の差異等に対する多周波・多偏波のマイクロ波信号の応答特性を明らかにする。以上に基づいて、昼夜・天候によらず適時に農地・作物の量的・形態的特性等の情報を精度よく広域的に抽出・評価するための基礎手法を提示する。研究成果をとりまとめ、広く内外の学会等で公表する。
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