研究概要 |
本研究は衛星SARセンサ等のマイクロ波センシングによって適時に作物・農地情報を評価するための新たな遠隔評価法の技術的基礎を探究している。本年度は以下のような観測ならびに解析を進めた。 1.統計解析、散乱プロセス物理モデル、作物発育形態モデルを用いた信号データの解析 情報ニーズの高い移植期、生育中期(施肥診断期)、成熟期に照準を絞って、Xバンド(9.6 GHz)およびCバンド(5.75 GHz)の新規衛星SARセンサによる新規観測データを取得し、同期して光学衛星画像データならびにイネの量的・形態的形質や農地状態の地上多地点データを収集した。これらのデータセットを、群落の量的特性や形態特性を組込んだ後方散乱プロセスモデル・発育形態モデル等を用いて解析した。その結果、群落特性や農地管理、圃場状態に対するX、Cバンド各偏波の後方散乱係数の関係と感度特性が解明された。 2.多周波・多偏波マイクロ波センシングによる作物・農地情報評価手法の開拓 得られた基礎知見のうち、以下の点は特に新規性が高くかつ応用面でも有望と考えられた。1)Xバンド後方散乱係数(σ0)はイネ穂重量と密接な関係があり、衛星SARセンサによる収量性の直接広域評価の可能性が示唆された。2)Cバンドσ0と群落光吸収能の線形関係が明らかになった。光学センサの重大な制約に対するブレイクスルーとなる可能性がある。3)Xバンド、Cバンドのσ0と広範な群落特性および農地状態との関係について明確な基礎知見を提供した。4)Ku, Ka, X, C, Lバンドについて、目的とする群落形質・情報ごとに最適な周波数・偏波・入射角等の組合せを明らかにし、評価アルゴリズムを提示した。 成果は昼夜・天候によらず適時に農地・作物の量的・形態的特性等の情報を精度よく広域的に抽出・評価するための先導的な技術的基礎となる。研究成果は広く内外の学会等で公表中である。
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