研究課題/領域番号 |
22380144
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 忠夫 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00118358)
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研究分担者 |
北澤 春樹 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (10204885)
川井 泰 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (00261496)
西村 順子 東北大学, 大学院・農学研究科, 技術専門職員 (10241556)
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キーワード | プロバイオティクス / 血液型乳酸菌 / 潰瘍性大腸炎 / 競合阻害 / ビフィズス菌 / アドヘシン / 機能性ヨーグルト / 経腸栄養剤 |
研究概要 |
高齢者の大腸がんと並んで若年層の潰瘍性大腸炎(UC)が現在日本では急増し、その予防と治療のカギを握るのは、ヒト腸管内プロバイオティック乳酸菌などの「ヒト腸管付着性機構の解明と応用」に関する基盤研究である。我々のこれまで蓄積してきたヒト腸管ムチンのABO式血液型抗原糖鎖に結合する「血液型乳酸菌」と一連の新規アドヘシン(細胞付着因子)の発見成果を基礎として、有用菌を用いて炎症性の腸疾患などの原因有害菌の特異的排除機構の解明を行い、最終的には有害菌排除能ヨーグルトの構築により、UCなどの炎症性腸疾患(IBD)を予防することを研究目的としている。 平成22年度は、ヒト大腸ムチンに発現する結合糖鎖の中でABO式血液型抗原部位を認識して結合する「プロバイオティック血液型乳酸菌」の広域スクリーニングを行って、より優れた強力なライブラリーを構築できた。また、同じ血液型抗原に対して結合性を有する病原性細菌である「血液型有害菌」の潰瘍性大腸炎患者の腸管からの単離同定も同時並行的に実施して、優れた炎症性病原性細菌ライブラリーも構築できた。 平成23年度は、ヒト腸管の腸内細菌叢(フローラ)における腸管付着性や定住性機構を解明するために、血液型結合性菌株を善玉菌と悪玉菌から選抜して、その相互作用のBIACOREによる解析、ヒト腸管細胞培養株での相互作用確認解析、結合因子の同定と糖鎖認識部位のエピトープ解析などを実施した。また、新しいBiacore評価系として、ヒト大腸ムチンの結合糖鎖のシアル酸と硫酸基に着目し、シアリダーゼでシアル酸を、スルファターゼで硫酸基を切り出し、これらを特異的に認識するプロバイオティック乳酸菌とビフィズス菌を選抜した。 とくにプロバイオティックビフィズス菌を用いて、潰瘍性大腸炎の原因菌の一つと考えられているFusobacterium varium(バリウム菌)のヒト大腸ムチン結合糖鎖への付着を阻害する菌株の存在することを発見した。これらの研究成果は、来年度のヒト臨床試験を想定した研究の最終ステップに移行できることを確約していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、ヒト大腸ムチンの結合糖鎖のシアル酸と硫酸基およびABO式血液型抗原への付着性を個別に検討できるBiacore専用のセンサーチップCM5上に構築が完了した。この新しいセンサーチップを使って、とくに硫酸基を特異的に認識結合するプロバイオティックビフィズス菌を選抜できた。この菌を用いて、潰瘍性大腸炎患者より実際に単離したFusobacterium vatiumの野外株のヒト大腸ムチンへの結合性を解析し、競合的にバリウム菌の結合を阻害できる実用株を発見することができた。まずは、センサーチップの完成が予想よりもかなり早く有用菌を単離することに漕ぎつけた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の平成22年度には、潰瘍性大腸炎を防止する可能性の高い、プロバイオティック乳酸菌の数株を選抜することができた。本年度の平成23年度には、さらに大腸下部の直腸やS字状結腸でヒト大腸ムチンに高発現している硫酸基に特に強く認識結合するプロバイオティックビフィズス菌の数株を選抜することができた。また、とくにビフィズス菌については、来年度はヒト臨床試験に移行するステップが確保できたので、実際に実施することを試みたい。
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