研究概要 |
筋肥大・再生の基盤である「運動神経ネットワーク(神経末端の筋線維への再接着および神経軸索の空間配置)の再構築を支配する分子機構」を明らかにすることを目的としている。これまでの研究により、筋幹細胞(衛星細胞)が神経細胞ガイダンス因子Sema3Aを合成・分泌し運動神経ネットワークを能動的に制御している」という先駆的な細胞間コミュニケーションモデルを提起した(Tatsumi et al. 2009, Am. J. Physiol. Cell Physiol., Editorial Focusに選定)。本研究ではこれを更に発展させるため、増殖因子依存的なSema3A発現誘導機構を追究した。衛星細胞の初代培養系を用いて先ず、Sema3Aの発現を誘導する因子を検索した。肝細胞増殖因子(HGF)の濃度依存的にSema3A発現が誘導されることを既に明らかにしているので、それ以外の細胞増殖因子に同様の効果があるかどうかを調べた。培養48時間目の衛星細胞に、FGF2、R^3-IGF-1、PDGF-BB、transferrin、TGF-β2、EGFをそれぞれ終濃度2.5ng/mlと25ng/mlで添加し、24時間後のSema3AのmRNA発現量をrealtime PCRで測定した。FGF2を添加するとHGFに匹敵する強いSema3A発現誘導効果が認められ、25ng/ml(300pM)添加区では対照区(FGF2非添加区)の約9倍までmRNA発現量が増加した。タンパク質レベルでの発現上昇もWestern blottingや細胞免疫染色で確認された。他の細胞増殖因子にはいずれの濃度でも誘導効果は観察されなかった。次に、FGF2を種々の濃度で添加しSema3AのmRNA発現量を同様に調べたところ、HGFと同様に100-300pMでその効果が最大となる顕著な濃度依存性を示した。これらの結果から、Sema3Aの発現誘導因子としてHGFの他にFGF2の重要性が明らかになった。
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