平成24年12月に実験過程で、成長卵では機能するAキナーゼの制御サブユニット(PKA-R)のPKA-R2が成長途上卵では機能せずPKA-R1が代替する可能性が浮上した。成長卵と成長途上卵で機能するPKA-Rのサブタイプが異なることが確実であれば、これこそが申請者が追い求めている発生能変化の分子メカニズムの本質である可能性があり、これを確認することは必要不可欠である。 そこでPKA-R1に関するベクターを構築しなおし、これを用いて成長卵、成長途上卵にPKA-R2で行った全ての実験をPKA-R1を用いて追加実験した。 成長卵では減数分裂の再開前にPKA-Rが核内に移行するが成長途上卵ではこれが起こらないことが分かっていた。PKA-Rの局在には、これをアンカーするAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)が関与する。そこで減数分裂能にPKA-Rの核内移行が必要であるかを複数のAKAPをクローニングして調べた結果、成長卵ではAKAP5を、成長途上卵ではAKAP5とAKAP7αを抑制するとPKA-Rが核内に移行し減数分裂が再開することが明らかとなった。この時、移行するのは成長卵ではPKA-R2、成長途上卵ではPKA-R1であった。また、AKAPとPKA-Rの結合を抑制するペプチドを成長卵、成長途上卵に発現させると減数分裂が再開したが、この時作用するペプチドは成長卵ではPKA-R2との、成長途上卵ではPKA-R1との結合を阻害するペプチドが有効であった。さら実際に機能するPKAの触媒サブユニット(PKA-C)の局在を変化させるためにPKA-Rの発現阻害を行ったところ、成長卵ではPKA-R2、成長途上卵ではPKA-R1の抑制を行った時に有効であった。 以上より、成長卵ではPKA-R2、成長途上卵ではPKA-R1がPKAの局在変化に機能しており、機能する因子の変化が卵の減数分裂能の本質であることが強く示唆された。
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