研究概要 |
本研究による卵の再構築法は新たな発生工学技術の開発・応用技術への適用、ならびに生理学的解析のための有用な手法となり得る。本研究ではブタにおける再構築卵作製法を確立し、一連の応用研究を行う。年次計画に従い、22年度は遠心・融合による卵再構築法の確立ならびに未固定・可視化卵における受精・発生現象の解析を行った。遠心処理後の小片は、実体顕微鏡下で褐色(B)小片と透明(T)小片に分別される。B小片ならびにT小片の作製効率は、核を含むあるいは含まない小片の合計として、それぞれ卵1個あたり0.58ならび0,32個であった。また、両者にはミトトラッカーの染色・解析によりミトコンドリア等細胞小器官の含有量に違いがあることが明らかとなった。これらを別々に融合し、それぞれB再構築卵ならびにT再構築卵を作製することができた。両者とも脂肪滴を含まないため、当初の計画通り可視化ブタ卵として供試できる。これらの卵に体外受精を行い、受精(精子侵入ならびに前核形成)に及ぼす影響を検討したところ、精子侵入率ならびに雄性前核形成率はB再構築卵(95.8%)にくらべてT再構築卵(66.7%)で有意に低下した。B再構築卵ではほとんどすべての卵で雄性前核が認められた(94,8%)。いっぽう、T再構築卵では受精しても前核が形成されなる率が低く(50.0%)、精子頭部が膨化したままの状態のものが認められた。以上の結果から、小片に含まれる細胞質小器官の分布の違いにより、精子侵入ならびに前核形成に影響をおよぼすことが示唆された。これらの結果から、再構築法により、ブタ卵から脂肪滴をあらかじめ取り除きクリアーな細胞質を用いて小片集合卵を作製して、前核形成までの受精・発生現象を生きた状態で詳細に解析できることが明らかになった。
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