研究課題
本研究の目的は、バベシア原虫はたとえ赤血球外に脱出した後も宿主赤血球膜を常に纏っており、巧みに宿主免疫から回避していると言う原虫固有の生物学的特性を足がかりに、宿主赤血球膜の再構築を引き起こすバベシア原虫固有の寄生戦略を解読することである。平成22年度は、各種赤血球膜分子に対する特異抗体を用いた免疫組織学的研究を行うことで、宿主赤血球膜分子を纏うバベシア原虫の赤内型増殖に関する概観を把握することにあった。1)赤血球膜分子に対する特異抗体の作製を試みた結果、赤血球膜の主要構造蛋白質であるAnkyrinを認識する特異抗体の作製に成功した。2)上記抗体に加えて既存の赤血球膜分子に対する特異抗体を用いてバベシア原虫の培養物に対する共焦点レーザー顕微鏡解析を行った結果、赤血球膜分子であるBand 3、Spectrin、Ankyrin、及びGlycophorin Cはバベシア原虫の周囲に検出されなかったが、赤血球膜に局在する宿主由来Na,K-ATPaseは赤血球内に寄生した内部原虫や赤血球外に脱出した外部原虫の原虫膜周囲に陽性反応を示すことが観察された。3)バベシア原虫のSpherical body proteinは感染赤血球内に分泌されることが判明し、赤血球膜骨格の再構築に関わっている可能性が示唆された。4)マウス感染モデル系を用いた解析の結果、バベシア原虫は制御性T細胞を利用して免疫から回避していることが判明した。赤血球外へ脱出したバベシア原虫は赤血球膜由来のシアル酸や脂質に加えて、Na,K-ATPaseをも纏っていることが判明した。纏うための膜骨格の再構築に原虫由来分泌蛋白質が関与している可能性が高いと思われる。また、バベシア原虫が宿主赤血球膜分子を纏うことで、制御性T細胞を利用した免疫回避を成立させていることも想定された。
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