研究課題
本研究の目的は、宿主赤血球膜の再構築を引き起こすバベシア原虫固有の寄生戦略を解読することである。平成24年度では、以下の事象を明らかにした。1)バベシアの膜蛋白質(EMA-2)は赤血球内で増殖する際に赤血球の骨格分子actinと相互作用している。2)バベシアの感染に伴って宿主のTNF-αの産生が誘導され、その結果として肝臓のcytochrome P450の発現と活性が著しく低下する。3)バベシアのGPI膜蛋白質(MSA-1、MSA-2b、MSA-2c)は野外株で高度に遺伝子多型を示す。4)バベシアの排除エフェクターとして宿主のマクロファージが重要な役割を担っている。5)蛍光蛋白質を永続的に発現する組換えバベシアの作製に成功し、赤血球への侵入時には、独特な滑走運動(Gliding motility)を示すことが明らかになった。6)バベシアの貫通膜蛋白質(AMA-1)の遺伝子の単離に成功した。またバベシアの分泌蛋白質ロプトリーは免疫原性が高く、原虫側の機能的分子の候補となった。7)Spherical body proteinはメロゾイト内のSpherical bodyと呼ばれる細胞内小器官で合成され、赤血球寄生後期には感染赤血球内に分泌され、さらには赤血球脱出期に培養上清に放出される。8)バベシアの赤血球内増殖の複製、転写、翻訳等を担っている原虫小器官アピコプラストを標的とした薬剤(ciprofloxacin、thiostrepton、rifampin)やバベシアの遺伝子制御を担っているhistone deacetylase活性を標的としたapicidineがバベシアの増殖を著しく阻害することを明らかにした。9)バベシアの膜輸送や複合体形成に関与していると考えられるシャペロン分子(HSP-70)の発現と局在解析を行った。10)バベシアの感染血清中には、赤血球のcatalase活性を阻害し、赤血球膜を溶解させる因子が存在していることを見いだした。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (5件)
J. Vet. Med. Sci.
巻: 74 ページ: 241-245
10.1292/jvms.11-0036
Vet. Parasitol.
巻: 184 ページ: 309-316
10.1016/j.vetpar.2011.09.021
Infect. Immun.
巻: 80 ページ: 311-320
10.1128/IAI.05900-11
Mol. Biochem. Parasitol.
巻: 181 ページ: 162-170
10.1016/j.molbiopara.2011.11.001
巻: 187 ページ: 17-22
10.1016/j.vetpar.2012.01.008
Antimicrob. Agents Chemother.
巻: 56 ページ: 3196-3206
10.1128/AAC.05488-11
Parasitol. Int.
巻: 61 ページ: 493-496
10.1016/j.parint.2012.02.006
PLoS ONE
巻: 7 ページ: e35227
10.1371/journal.pone.0035227
巻: 190 ページ: 401-410
10.1016/j.vetpar.2012.06.035
巻: 190 ページ: 423-433
10.1016/j.vetpar.2012.06.026
Exp. Parasitol.
巻: 132 ページ: 327-333
10.1016/j.exppara.2012.08.004
巻: 132 ページ: 508-512
10.1016/j.exppara.2012.09.013