研究課題/領域番号 |
22380157
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
志水 泰武 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (40243802)
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研究分担者 |
山本 欣郎 岩手大学, 農学部, 教授 (10252123)
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キーワード | グレリン / 大腸運動 / 排便 / 脊髄 / 消化管 / 骨盤神経 / 術後障害 / 便秘 |
研究概要 |
本研究の目的は、中枢神経による消化管運動の制御機構を解明し、ストレスと下痢や便秘の因果関係を明確にすることである。前年度までに、グレリンが腰仙髄部の排便中枢に働きかけ、大腸運動を亢進させ糞便の排泄を促すこと、脂肪酸修飾のないデスアシルグレリンにはその作用がないことを明らかにした。本年度は、脊髄排便中枢におけるグレリンの作用機序を検討した。興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸で脊髄腔内の神経を興奮させることにより、グレリンと同様の反応が再現できた。また、高濃度のグルタミン酸で脱感作させると、グレリンの作用が発現しなくなった。神経の活動を阻害するテトロドトキシンやリドカインを前投与することによっても、グレリンの作用は消失した。これらの結果から、グレリンは脊髄内の神経をターゲットとすることが明らかとなった。次に、グレリンが脊髄で作用する神経は、視床下部に存在するグレリン感受性神経と類似の性質か否か検討した。視床下部の神経は、ニューロペプチドY(NPY)を伝達物質として放出するが、NPYを脊髄腔内に投与しても、グレリン作用は再現されなかった。また、NPY受容体拮抗薬でグレリンの作用は阻害されなかった。視床下部のグレリン感受性神経は、AMPキナーゼの活性化処置で活動亢進する性質を持つが、脊髄内でこの酵素を活性化させても大腸運動は変化しなかった。また視床下部の神経とは対照的に、レプチンによる拮抗作用も認められなかった。これらのことから、グレリンによる大腸運動亢進作用は、脊髄内に存在するグレリン感受性神経を介していることが明らかとなった。また、その作用経路には、グルタミン酸が関与していることが示唆された。さらに、脊髄内のグレリン感受性神経は、視床下部のグレリン感受性神経とは性質が異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した脊髄におけるグレリン作働性神経回路の成り立ちを解明する計画は、視床下部に存在するグレリン応答性神経との比較検討を行い、予定通りに実験が完了した。この成果は現在投稿準備中である。脊髄スライス標本を作製する実験は、現時点で成功に至っていないが、その代わりとして次年度に行う計画(術後大腸運動障害モデルでの有用性を調べる実験)を繰り上げて実行したので、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄のスライス標本を用いた実験は、予想以上に高度なテクニックを要する実験であったので、本年度は成功に至らなかった。最終年度に行うべき実験の一部を先行させたので、全体の計画を大幅に変更することなく、脊髄のスライス標本を用いた実験を推進することができる。この方法に精通している生理学研究所の古江准教授に依頼し、技術指導を受けることとし、当初の目的を達成する予定である。
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