研究課題/領域番号 |
22380161
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 悦郎 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (00160903)
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キーワード | インフルエンザ / トランスジェニクマウス / ウイルス / 抗病性動物 / Siglec / 感染症 |
研究概要 |
1.系統化に成功した可溶型Siglec5発現トランスジェニックマウス5系統および可溶型Siglec9発現トランスジェニックマウス3系統のうち、血液中への発現量の高い各々の1系統について、各種の臓器を摘出して組織標本を作製し、抗ヒトIgG抗体を用いて酵素抗体法あるいは蛍光抗体法によって可溶型Siglecの発現を調べた。調べたすべての臓器において、各々の可溶型Siglecが発現していることが確認されたが、インフルエンザウイルスの標的臓器の一つである肺での発現は他の臓器に比べて弱かった。 2.上部気道における可溶型Siglecの発現については、気管の気管上皮、肺の細気管支の上皮や肺胞上皮でシグナルが認められたが、これらはそれほど強いものではなく、インフルエンザウイルスの主要感染部位である気道上皮細胞での発現が弱いという結果となった。 3.可溶型Siglec9発現トランスジェニックマウスで血液中への発現量が最も高い1系統について、高病原性トリインフルエンザウイルスであるA/mountain hawk-eagle/Kumamoto/1/07(H5N1)株(16および1.6pfu/匹)およびA/Duck/V/ietnam/G12/08(H5N1)株(75pfu/匹)を用いて感染実験を実施したが、何れの株に対しても感染抵抗性は示されなかった。 4.可溶型Siglec5発現トランスジェニックマウス3で、血液中への発現量が最も高い1系統について、同様に高病原性トリインフルエンザウイルスを用いて感染実験を実施したが、A/mountain hawk-eagle/Kumamoto/1/07株(16pfu/匹)およびA/Duck/Vietnam/G12/08株(75pfu/匹)に対しても感染抵抗性は示されなかった。しかし、A/mountain hawk-eagle/Kumamoto/1/07株(1.6pfu/匹)の感染実験でのみ、対照のマウスに比べ、生存日数の延長が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の2種類のトランスジェニックマウスを各々3系統以上樹立し、遺伝子発現の組織特異性について免疫組織学的手法により解析した。さらに、高病原性トリインフルエンザウイルス2株を用いて感染実験を行い、1株の感染に対して、可溶型Siglec5発現トランスジェニックマウスで、生存日数の延長が認められた。以上の実験結果は、当初の計画に基づいて実施され得られたものであることから、計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.生存日数の延長が認められた可溶型Siglec5発現トランスジェニックマウス対して、マウスが感受性を示す他の抗原亜型のウイルス株を用いて感染実験を実施して、抵抗性の特異性について検討する。 2.可溶型Siglec5発現トランスジェニックマウスの感染抵抗性は必ずしも充分ではないので、ウイルスタンパクに対する抗体遺伝子を導入したMDCK細胞における感染抵抗性についても検討する。
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