研究概要 |
研究代表者は「トリのグリオーマso-called fowl glioma」がA型トリ白血病ウイルス(ALV-A)感染症であることを明らかにした。本課題の目的は代表者が分離した神経病原性ALVの解析によりレトロウイルス誘発性神経障害の分子基盤を解明することである。今年度得られた成績は以下の通りである。1.トリのグリオーマ誘発ウイルス(FGV)のlong terminal repeat(LTR)を遺伝子導入した鶏を作製してLTRの機能を解析するためにFGV-LTR-GFPを導入したファウンダー鶏(キメラ個体;G0世代)をSPF鶏と戻し交配した。31羽の雛について目的遺伝子の有無を解析したが,ヘテロ個体は得られなかった。2.FGVの病原性規定因子解明に向けてその基礎を築くため,FGVの感染性分子クローンの作製を試みた。作製した分子クローンを培養細胞にトランスフェクションすると,その培養上清中にALV p27抗原がELISAにより検出された。電子顕微鏡観察では上清中に直径約100nmのウイルス粒子と細胞膜からの出芽像が確認された。また,トランスフェクションした細胞の培養上清を新たに接種した細胞のcDNAはFGV特異的Nested PCR陽性を示した。さらに,シークエンス解析によって感染細胞から産生されたALVのウイルスゲノムはFGVと完全に一致することが確認できた。これら成績から,作製したFGV分子クローンは感染能を有し,今後のFGVの病原性解析に有用であることが示された。3.野外のグリオーマ罹患鶏の心臓にはこれまでに報告のない心筋の形態異常が発生していることが明らかになった。
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