研究課題/領域番号 |
22380166
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大屋 賢司 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50402219)
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研究分担者 |
福士 秀人 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (10156763)
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キーワード | 人獣共通感染症 / 細胞内寄生細菌 / クラミジア / オウム病 / 外膜蛋白質 / 病原性 |
研究概要 |
オウム病クラミジアChlamydia psittaciは、偏性細胞内寄生性細菌であり、主要な人獣共通感染症の原因となる。クラミジアの多型膜蛋白質Pmpは、C. trachomatisにおいて強い免疫原性を有する菌体表面抗原として同定された。ゲノム解析の結果、Pmpはゲノム上でファミリー(AからI)を構成しており、特に宿主を複数もつクラミジアではサブファミリーを含め20以上にも及ぶ(ヒト特異的C. trachomatisでは9)ことから、宿主域の多様性への関与が示唆されているが、感染の場における生物学的な意義は不明である。今年度の成果概要は以下の通りである。1)Pmpファミリーの比較ゲノミクス:これまでに我々の決定したC. psittaci Mat116株と既報の他種クラミジアPmpファミリーの比較ゲノミクスを行っている。今年度は、C. psittaci近縁他種株間の間での比較ゲノミクスを行う目的で、次世代シーケンサーを用いて得た配列の解析を行った。現在は得られたスーパーコンティグからギャップクローズを行っている。2)Pmpファミリー発現プロファイルの解析:主要なPmpファミリーのリアルタイムPCRによる定量系を確立できた。これに加え、感染細胞より抽出した全RNAサンプルを用いてRNAseqによるトランスクリプトーム解析を試みた。詳細なデータは解析中である。3)C. psittaci特異的なPmpの機能解析:ゲノム解析の結果同定したC. psittaci特異的Pmpについて、抗血清を作成し感染細胞における発現を検討した。このPmpは、基本小体、感染細胞内において菌体表面に発現していることが確認された。菌体表面に表出していることから酵母ハイブリッドを用いた標的探索を行ったが、標的候補は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のような理由で当初より規模は縮小しているが、比較的順調に進行していると考えている。 1)Pmpファミリーの比較ゲノミクス:順調に進行していると考えている。 2)Pmpファミリー発現プロファイルの解析:多少難航している。幾つかの主要なPmp定量系を確立できたものの、ファミリー間の相同性の高さから、PCRによる網羅的定量系を確立することが難しいことが分かった。そこで、RNAseqによる網羅的解析を主に行うこととした。 3)C. psittaci特異的なPmpの機能解析:順調に進行していると考えている。ゲノム解析の結果同定した特異的Pmpに関して、菌体抗原としての性状解析を行うことができたた。宿主側標的探索は現在のところうまくいっていないが、診断用抗原としての利用が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
1)Pmpファミリーの比較ゲノミクス:マニュアルによるギャップクローズ作業の難航が予想されるため、全ゲノム配列決定と同時並行でPmp領域のみの比較も検討する。 2)Pmpファミリー発現プロファイルの解析:他の人工培地で培養可能な細菌と異なり、クラミジアのような偏性細胞内寄生性細菌では、宿主細胞RNAが大部分を占め、mRNAの調整が難しいことも明らかとなった。クラミジアカスタムアレイによる網羅的解析も検討する。 3)C. psittaci特異的なPmpの機能解析:同定したPmpは抗原性が非常に高く、診断用光源としての解析を進める。他のPmpに関しては、リアルタイムPCRによる定量系、ポリクローン抗体等、解析材料のそろったものについて、2)の結果も踏まえ随時方針を決定する。
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