オウム病クラミジアChlamydia psittaciは、偏性細胞内寄生性細菌であり、主要な人獣共通感染症の原因となる。クラミジアの多型膜蛋白質Pmpは、C. trachomatisにおいて強い免疫原性を有する菌体表面抗原として同定された。Pmpはゲノム上でファミリーを構成しており、特に宿主を複数もつクラミジアではサブファミリーを含め20以上にも及ぶことから、宿主域の多様性への関与が示唆されているが、感染の場における生物学的な意義は不明である。今年度の成果概要は以下の通りである。1)Pmpファミリーのクラミジア種・株間における比較ゲノミクス:比較解析の結果、クラミジア種間では、比較的近い種間でもPmpの数が異なるなど、多様性が確認された。一方、我々が配列決定した国内分離株を含む、C. psittaci株間においては、非常に似通っていることが分かった。本アプローチでは、ファミリー以外の遺伝子についても、C.psittaci特異的な遺伝子を同定でき、それらを標的とした新しい診断法を樹立することができた。2)クラミジア増殖ステージにおけるPmpファミリー発現プロファイル解析:主要なファミリー遺伝子のリアルタイムPCR検出系に加え、感染細胞より抽出した全RNAを用いたRNAseqによる発現プロファイル解析を試みたが、検体の質的量的問題により芳しい結果は得られなかった。幾つかのPmpについて、抗血清を作製した。3) Pmpと宿主細胞側因子の相互作用を含めた機能解析:診断用抗原としての有用性を明らかにしたPmpGxについて、感染細胞内における発現・局在について詳細な検討を行った。引き続き酵母ハイブリッドによる標的探索を行ったが、候補を得ることはできなかった。1)で樹立した診断法を用いた実態調査も引き続き行った。飼育鳥を始めとした449検体における陽性数は19(4.2%)であった。
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