高病原性鳥インフルエンザウイルスの伝播に果たす野鳥や野生生物の役割を明らかにする目的で、最終年度である今年度はジュウシマツ(スズメの代替え種)を用いて以下の通り、予想される感染経路の実証実験を行った。 1) 感染野生水禽類の生息する湖の水を介して陸生野鳥が感染する経路を想定して、ウイルスを含む飲水実験を実施したところ、10の5乗および4乗EID50/mlのウイルスを含む水を飲水として与えた群は4日目までに全羽死亡したが、10の3乗EID50/mlウイルスを飲水した群は観察期間中全羽生存した。2) 陸生野鳥同士の水平伝播を想定して、同居感染実験を実施したところ、10の7乗EID50/mlのウイルスを接種した群は4日目までに7羽中5羽が死亡し、同居群は5日目に6羽中2羽が死亡したが、残りは観察期間中生存した。3) 鶏舎内に侵入した陸生野鳥から鶏への直接伝播を想定して、両者の同居感染実験を実施したところ、10の7乗EID50/mlのウイルスを接種したジュウシマツは5日目までに8羽すべて死亡したが、同居させた鶏は4日目までに4羽中2羽が死亡した。すべての実験を通じて、死亡した鳥からはいずれもウイルスが回収された。一方、生存した鳥では2週後の血清中に接種ウイルスに対する抗体価は認められず、感染が成立していないことが確認された。 以上の実験成績および昨年度までの成績を総合し、以下の点が明らかとなった。①感染した野生水禽が糞便とともにウイルスを排泄している湖沼の水を介して、スズメ等の陸生野鳥が感染する可能性が考えられる。②感染した陸生野鳥が鶏舎内に侵入し、鶏と接触(エサや水を共有)した場合にウイルスが伝播する可能性が考えられる。しかし、③陸生野鳥の間で次々と感染が広がる可能性は考えにくい。 以上、本研究成績は鶏舎内への陸生野鳥の侵入防止対策が本病防疫上極めて重要であることを示している。
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