平成22年度については、伴侶動物の神経疾患のうち遺伝性疾患である可能性が高い症例を選別し、主に症例のパラフィン包埋組織よりDNA抽出し、抽出のための試適条件を検討し、一部の症例については、遺伝子解析に十分な質と量が確保できた。また疾患別に以下の項目について検討した。 パピオン犬の小脳皮質アビオトロフィー(CCA)と神経軸索ジストロフィー(NAD):病理学的にそれぞれの疾患における神経脱落機序に着目して検討し、CCAではアポトーシス、NADでは炎症反応が関与した神経細胞死により神経脱落が生じていることを明らかにした。本成果については科学論文として公表した。また各症例のパラフィン組織よりDNAを抽出し、平成23年度より遺伝子変異を調査する。 コーギー犬のALS様脊髄変性症:国内で3症例が収集され、その病理像を検討し、関連するSOD1やNOSの発現状態を明らかにした。SOD1遺伝子についてはすべての症例で変異を検討し、いずれにも本遺伝子の変異が確認された。以上の内容については、学術雑誌に内容を投稿し現在審査中である。 フレンチ・ブルドックのアレキサンダー病様疾患:国内初発例の病理像を科学雑誌に公表した。パラフィン包埋組織よりDNAを抽出し、平成23年度にGFAP遺伝子の異常を検討する。 犬の壊死性髄膜脳炎(NME):犬種ごとの病態の相違を中心に病理的知見を比較検討するとともに、凍結組織、パラフィン包埋組織よりDNAを抽出した。検討する遺伝子については現在絞り込みを進めている。 以上の神経疾患の他、コーギー犬の舌萎縮を特徴とする筋疾患や組織球性肉腫罹患例の血液よりDNAを採取し脊髄変性症との関連も含め、複数の候補遺伝子の変異について検討を進めている。その他ライソゾーム病関連の複数疾患の病態を解明し、学術誌に内容を公表した。
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