研究課題/領域番号 |
22380171
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 和幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (10223554)
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研究分担者 |
中山 裕之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40155891)
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キーワード | イヌ / 遺伝子疾患 / 神経軸索ジストロフィー / 変性性脊髄症 / ウェルシュ・コーギー / 組織球性肉腫 / 壊死性髄膜脳炎 / 肉芽腫性脳炎 |
研究概要 |
平成23年度は、主にイヌの神経疾患のうち遺伝性疾患の可能性が高い症例より、血液およびパラフィン包埋組織よりDNAあるいはRNAを抽出し、遺伝子解析に十分な質と量のDNA・RNAを保管し、疾患によってはゲノム解析により、疾患関連遺伝子が数個同定されて。疾患別に実施状況を記載する。 パピオンの神経軸索ジストロフィー(NAD):平成23年度に新規症例を発見し、各種病理検索によりNADと診断した。本症例については、獣医師とブリダーの協力が得られたため、罹患例に加え、その両親の血液よりDNAとRNAを採取し、過去のNAD症例とともに次世代型シークエンサーにより全ゲノムを解析し、罹患例に特有の遺伝子変異を検索している。本検索については平成24年度に成果が得られると期待している。コーギー犬のALS様脊髄変性症(DM):平成23年度に新たに3症例が収集された。また平成22年度に実施したSOD1やNOSの発現状態については、学術雑誌にその内容を公表した。現在、本疾患については神経細胞脱落メカニズムについて新規症例を加え検索しており、コーギーのDMに特異的な病態を一部、明らかにできた。内容については現在、内容をとりまとめ平成24年度中に学術雑誌に公表を予定している。 コーギー犬の組織球性肉腫:上記疾患の検索に関連し、コーギー犬の頭蓋内組織球性肉腫の症例が収集された。この内容は平成23年度に海外の科学雑誌に公表したが、国内のコーギー犬には組織球性肉腫の罹患例が非常に多いことが判明したため、疾患関連遺伝子について平成23年度に次世代型シークエンサーを用いて検討し、候補遺伝子の絞り込みに成功した。この内容については、平成24年度より別途、挑戦的萌芽研究に申請し、より詳細な検証を進める予定である。 犬の壊死性髄膜脳炎(NME):犬種ごとの病態の相違を中心に病理的知見を比較検討し、病理学的特徴についてはその概要をとりまとめ平成24年度に科学雑誌にその概要を報告する予定である。現在、ケモカイン等の液性因子について、犬種間あるいはNMEと肉芽腫性髄膜脳炎(GME)間の類似性と相違について検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床系獣医師と東京大学医科学研究所との協力関係のもと、当初予定どおりに概ね順調に症例の収集と解析が進められていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成23年までに収集された症例のDNAおよびRNA解析に主軸をおき、各疾患の疾患関連遺伝子や原因遺伝子の特定を進める。また得られた結果を疾患ごとに学術誌に公表する。
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