研究課題
本年度は、臨床例由来の様々なSA(黄色ブドウ球菌)株に我々のファージがどのくらい効くのかを調べ、さらに、モデルマウスを用いた系で、ファージが生体内でSAに対して効果的に効くことを証明できた。当初の計画をほぼ達成できた。詳細を項目別に以下に記す。1)臨床例由来SA株に対するファージの溶菌効果乳房炎乳サンプルを北海道2地区(石狩、釧路)から広く集め、そこから109株のSAを分離し、ファージによる溶菌効果を判定した。ファージ12番、39番は、全てのSAに対して溶菌効果を示し、ウシ乳房炎を引き起こすSAに対して効果が高いことが明らかになった。2)乳房炎モデルマウスを用いたファージセラピーの効果の検証乳房炎モデルマウスの実験により、ファージがSAの増殖を抑制することが明らかに出来た。また、投与経路は、乳腺への直接注入だけでなく、腹腔注入や静脈注入でもファージが乳腺に移行し、効果をあげることが分かった。3)多剤耐性菌への効果多剤耐性SAに対しても、ファージは効果的に溶菌することが確認された。特に小動物医療や、ヒトの医療で問題となるMRSAなどにも応用できる可能性が示唆された。ほぼ目標は達成された、次年度は、論文化するとともに、実験的感染牛を用いてウシ乳房炎での効果を見定める実験を行いたい。
2: おおむね順調に進展している
我々が分離したファージが、広く臨床例由来のSAに良く効くことが明らかになり、実際の応用に期待できる結果を得ることができた。また、モデルマウスを使った系でも、複数の投与経路でのファージ効果も確認でき、今後が期待できる結果を得られた。
次年度は、予定通り、いよいよ実験的感染乳房炎牛を使って、ファージの効果を検証する実験を計画する。実際、ウシの乳房炎へファージを治療薬として用いるには、乳房の大きさ、乳量の問題、症例ステージの問題など、幅広いファクターがあり、効果を確認できないことも考えられる。ただ、臨床例由来SAに対しては、幅広く効果があるため、予防的な使用や、畜舎環境への応用など多彩な使用も検討することを視野に入れて進めていきたい。
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