平成23年2月以降、日本各地の複数の養蜂家から大量のミツバチの死亡報告と原因調査の依頼があった。これらのサンプルに存在する病原体を調査した結果、その大部分においてノゼマ微胞子虫(Nosema ceranae)の増殖が確認できた。この結果は、昨年度の疫学調査で明らかとなった日本国内の蜂群におけるノゼマ微胞子虫の高い浸潤率(64%)と一致する。N.ceranaeの増殖は、従来のノゼマ病の症状(腹部の膨満と下痢)を呈すること無く冬季に大量のミツバチの死亡を引き起こす。したがって、養蜂家がN.ceranaeによるノゼマ病の発症を認識することは困難であり、N.ceranaeの浸潤と疾病が高頻度で発生していると考えられた。 ミツバチの免疫能を相補する方法として、Wolbachia等の共生細菌、およびプロポリス等の蜂産品を利用する方法がある。Wolbachiaの共生によりショウジョウバエはウイルス感染に対する抵抗性を獲得することから、現在までに採取したミツバチサンプルにおけるWolbachiaの共生の有無についてPCR法により検討した。Wolbachia特異的な各種プライマーを使用したが、全てのサンプルにおいてWolbachiaの共生は確認されなかった。昆虫の共生細菌にはWolbachia以外の種も存在するので、これらについてさらに検討を行う。 また、ノゼマ微胞子虫の増殖をマーカーとしてミツバチの免疫能に対するプロポリスの効果についても検討中であり、明確な効果が認められた場合には、さらにプロポリスの分画を進める。
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