研究課題/領域番号 |
22380179
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤山 茂樹 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80357178)
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研究分担者 |
左子 芳彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60153970)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水質汚染 / メタン / メタン発酵 / 地球温暖化 / 環境微生物 |
研究概要 |
沿岸海洋域におけるメタン生成ポテンシャルを検討する当該提案において、平成22年度の研究の結果、由良川河口域底泥サンプルについて、メタン生成菌16SrRNA遺伝子のPCR増幅バンドを確認し、クローン解析を行った。由良川河口域底泥サンプルから、Methanotorris属メタン生成菌等に近縁の塩基配列が認められ、河口域においてメタン生成の可能性を示す実験結果が得られた。また、16種類の微細藻類培養株について、メタンガス生成の有無をガスクロで測定した。平成23年度は、由良川河口域底泥をサンプリングし、メチル化合物等を基質として添加して底泥のメタン生成ポテンシャルを測定した。その結果、硫化ジメチルやトリメチルアミンを基質として添加した場合、比較的多くのメタンが生成し、その他の基質を添加した場合メタン生成量は少ないことが分かった。由良川河口域底泥サンプルから、Methanosarcina lacustrisやMethanolobus profundiといったメチルアミンを資化できるメタン生成菌に近縁な16SrRNA遺伝子が検出された。これらの結果から、由良川河口域ではメタン生成菌に特異的な基質となるメチルアミン類を利用するメタン生成菌が活動していることが示唆された。平成24年度は、舞鶴湾底泥について、基質としてはトリメチルアミンや硫化ジメチルがメタン生成ポテンシャルが高いことを明らかにした。舞鶴湾底泥からDNAを抽出して解析した結果、メタン生成菌としてはMethanosarcinalesに属する古細菌がメタン生成ポテンシャルにかかわっていることが分かった。さらに、微細藻類からのメタン生成について研究を実施し、基質とした微細藻類種によってメタン生成ポテンシャルが異なることを見出した。これらの結果は、沿岸域の底泥から発生するメタンに関して、有益な科学的知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度は、由良川河口域底泥サンプルについて、メタン生成菌の16SrRNA遺伝子に特有なPCR増幅バンドを確認し、Methanotorris属メタン生成菌等に近縁の塩基配列が認められ、河口域においてメタン生成の可能性を示す実験結果が得られた。平成23年度は、由良川河口域底泥をサンプリングし、メチル化合物等を基質として添加して底泥のメタン生成ポテンシャルを測定し、硫化ジメチルやトリメチルアミンを基質として添加した場合、比較的多くのメタンが生成し、その他の基質を添加した場合メタン生成量は少ないことが分かった。由良川河口域底泥サンプルから、Methanosarcina lacustrisやMethanolobus profundiといったメチルアミンを資化できるメタン生成菌に近縁な16SrRNA遺伝子が検出された。平成24年度は、舞鶴湾底泥について、基質としてはトリメチルアミンや硫化ジメチルがメタン生成ポテンシャルが高いこと、メタン生成菌としてはMethanosarcinalesに属する古細菌がメタン生成ポテンシャルにかかわっていることや、微細藻類からのメタン生成について研究を実施し、基質とした微細藻類種によってメタン生成ポテンシャルが異なることを見出した。これらの成果から、沿岸域底泥におけるメタン生成に関わる科学的な知見が得られており、研究はおおむね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の2つのサブテーマについて研究を促進する。 サブテーマ① 河口域等底泥からのメタン生成 河口域等の底泥をサンプリングし、その底泥サンプルからDNAを抽出し、分子生物学的手法を用いて主にメタン生成菌の検出を試みる。得られた底泥中の微生物の16SrRNA塩基配列情報等を解析し、メタン生成・分解にかかわる基礎資料とする。さらに、微細藻類を基質とした場合、河口域等底泥中のメタン生成菌菌叢がどのように変化するかを解析する。 サブテーマ② 微細藻類からのメタン生成 今年度は、平成24年度に見出したメタン生成ポテンシャルの高い微細藻類種を中心に、メタン生成ポテンシャルを持つ底泥サンプルに培養した微細藻類細胞を加え、メタン生成実験を行う。
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