研究概要 |
作物の細胞からDNAが単独で放出されるわけではないので,他の生体高分子化合物と共存した状態でのDNA挙動を考えなければならない.そこで,共存する有機物の例として,生体高分子物質を扱う実験に広く使われているTris (hydroxymethyl)-aminemethane hydrochlodire (Tris-HCl)緩衝液を供試した.土壌粒子へのDNA吸着に関する研究にも,Tris緩衝液がバックグラウンドとして使われている(例:Cai et al.2006a ; 2006b).最近,タンパク質の金属への吸着に対して,Tris緩衝液が正の影響を与えると報告された(Wei et al.2009).黒ボク土および各種土壌構成成分へのDNA吸着に対するTris緩衝液の影響を調べた.黒ボク土,天然および合成アロフェン,ゲータイト,ギブサイト,カオリナイトで,0.1 M NaCl溶液(pH7.0)の場合に比べて,0.1 M Tris-HCl (pH7.0)緩衝液でDM吸着量が有意に大きかった(p<0.05).対照的に,モンモリロナイトでは,Tris緩衝液でDNA吸着量が有意に少なかった(p<0.05).総括的に,Tris分子は,黒ボク土等の変異荷電土壌粒子へのDNA吸着に対して有意に影響したことが分かった 別の実験として,供与DNAとして土壌に吸着させた抗生物質(アンピシリン)耐性のプラスミド,受容細菌としてE.coliを使用し,黒ボク土に吸着された遺伝子DNAの自然形質転換頻度を評価することを試みた.しかし,抗生物質が土壌に吸収されたためか,形質転換発現の判別がうまくできなかった.新たに、抗生物質等の生体由来高分子化合物の土壌構成成分への吸着を調べる必要性を認識した
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