研究概要 |
19世紀前半にシーボルトにより西欧に持ち込まれた雌1株の日本原産イタドリは,現在,欧米諸国において大繁殖し,被害が拡大している難防除性の雑草となっている.本研究ではこの外来性侵入雑草であるイタドリを在来種に寄生する植物病原糸状菌を用いた生物的防除法を開発しようとするものである.これまでの研究成果から,イタドリ斑点病菌がイタドリに特異的に高い病原性を示し,本雑草の生物的防除素材として有効であることを明らかにした.本菌はイタドリに対して宿主特異的であり,在来他種植物への安全性評価の点でも優れ,実用化が期待できる有望菌である.しかしながら,本菌は子のう胞子形成がin vivoで認められていないことから,昨年度同様,その子のう胞子形成条件について検討を行った.また,菌株の交配型を決定する交配型遺伝子座(MAT)に着目し,本菌の雌雄同株性について検討を試みた.現在までのところ,今回設計したMAT1領域を増幅するプライマー対を用いたPCRにより得た増幅産物の塩基配列解析に基づき,本菌はMAT1領域を有していることを明らかにした.現在,MAT1全領域について解析を進めているところであり,同時にMAT2領域についても同様の実験を展開中である.MAT遺伝子の存在が確認できれば、発現解析を行う予定である。 国際学会では,8月にポスターで2011 APS-IPPC Joint Meeting (Hawaii, USA),9月にIUMS2011(札幌),3月に第2回日韓合同シンポジウム(福岡)にて研究成果を報告した.また、3,月に第23回関東雑草研究会および第12回バイオコントロール研究会にて招待講演を行った。
|