本研究は、主要なシックハウスガスであるホルムアルデヒド(HCHO)を吸収・除去する観葉植物を遺伝子組換え技術によって作出し、室内空気の浄化に役立てること、およびHCHOに加えてメタノール(CH_3OH)やメタン(CH_4)を吸収してデンプンとして同化する植物(とくにイネ)を作出することを最終的な目標とする。すでに、われわれはメタノール資化性細菌の2つの酵素、3-ヘキスロース6-リン酸合成酵素(HSP)と3-ヘキスロース6-リン酸イソメラーゼ(PHI)を植物に導入し、これらを葉緑体において発現させることにより、HCHOを光合成のカルビン回路に導入してこれを同化させることに成功している。今年度得られた成果を次に箇条書きで示す。1)HCHOは植物にとっても有害であるが、その毒性の作用点について手掛かりを得るために、シロイヌナズナの野生株と形質転換株をHCHOに曝露することによってその発現が影響を受ける遺伝子をマイクロアレイ法に加えてリアルタイムPCRにより解析し、酸化ストレスが誘起されているという以前に得られた示唆を確認する知見を得た。(2)2つの酵素をより強く発現させ、かつ形質転換の回数を減らすために、2つの酵素を融合酵素として発現する合成遺伝子を作成し、コドンも双子葉植物(アラビドプシス)と単子葉植物のイネに最適化したもの2種類を新たに準備し、これをトマトおよびイネのRbcS遺伝子のプロモーターおよびトランシットペプチド翻訳領域の下流につないだベクターを作成した。(3)これらのベクターを用いて、シロイヌナズナ、タバコおよびイネを形質転換し、融合遺伝子を強く発現する組み換え体を得た。(4)現在これらについて酵素タンパク質の発現確認およびHCHO耐性や同化吸収能を調べている。(5)シロイヌナズナの培養細胞株T87の形質転換も実施中である。
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