研究課題/領域番号 |
22380182
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
泉井 桂 近畿大学, 先端技術総合研究所, 客員教授 (20025414)
|
研究分担者 |
秋田 求 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (80258061)
|
キーワード | ホルムアルデヒド / メタノール / シックハウスガス / 遺伝子組換え植物 / ファイトレメディエーション / シロイヌナズナ / イネ / タバコ |
研究概要 |
本研究は、主要なシックハウスガスであるホルムアルデヒド(HCHO)を吸収・除去する観葉植物を遺伝子組換え技術によって作出し、室内空気の浄化に役立てること、およびHCHOに加えてメタノール(CH_3O_H)やメタン(CH_4)を吸収してデンプンとして同化する植物(とくにイネ)を作出することを最終的な目標とする。また、HCHOの植物に対する毒性の発揮機構を明らかにするための基礎研究も行う。すでに、われわれはメタノール資化性細菌の2つの酵素、3-ヘキスロース 6-リン酸合成酵素(HSP)と3-ヘキスロース 6-リン酸イソメラーゼ(PHI)を植物に導入し、これらを葉緑体において発現させることにより、HCHOを光合成のカルビン回路に導入してこれを同化させることに成功している。今年度得られた成果を次に箇条書きで示す。1)HCHOの毒性の作用点について手掛かりを得るために、シロイヌナズナの野生株と形質転換株をHCHOに曝露することによってその発現が影響を受ける遺伝子をマイクロアレイ法に加えてリアルタイムPCRにより解析してきた。その結果、酸化ストレスの誘起が示唆されたので、今年度はシロイヌナズナの培養細胞株T87およびその形質転換細胞を用いて活性酸素がHCHOによって生成されることを明らかにした。(2)2つの酵素をより強く発現させ、かつ形質転換の回数を減らすために、2つの酵素を融合酵素として発現する合成遺伝子を作成し、コドンも双子葉植物(アラビドプシス)と単子葉植物のイネに最適化したもの2種類を新たに準備し、これをトマトおよびイネのRbcS遺伝子のプロモーターおよびトランシットペプチド翻訳領域の下流につないだベクターをすでに作成しているが、さらにCaMV35Sプロモーターによって駆動するものも作成した。(3)これらのベクターを用いて、シロイヌナズナ、タバコおよびイネを形質転換し、融合遺伝子を強く発現する組み換え体を得た。(4)昨年度に引き続き、各形質転換体について、酵素活性およびタンパク質の発現およびHCHO耐性や同化吸収能を調べている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画以上に進展したことは、T87株の利用によって、HCHOの作用機作についての手掛かりがえられたことであるが、一方遅れたことは、イネやシロイヌナズナでのGatewayシステムによる導入遺伝子の発現レベルが期待したほど良好でなく、これが翻訳開始部位周辺に入ってくるAttB配列のためである可能性が考えられたため、もう一度それを除いたベクターでイネの形質転換をおこなったために1年遅れることとなった。また、35Sプロモーターを用いた高発現用の市販ベクターが組織特異性はないがかなり良好な発現を示したことは収穫であった。酵素活性の測定も京都大学阪井教授のご協力により自分たちの研究室でも実施できるようになった。C14でラベルしたHCHOによる実験の許可が大学から得られなかったためとりこみ実験が実施できない状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
イネについてT2世代からホモのラインを取得する。 これまでにすでに得られた形質転換株にメタノールオキシダーゼ遺伝子およびペルオキシダーゼ遺伝子を導入して、メタノール資化能をイネやアラビドプシスに付与する計画を推進中である。 HCHOを吸収同化するための良好なプラスミドベクターができたので、観葉植物に導入することを計画中である。
|