研究課題/領域番号 |
22380187
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北島 健 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (80192558)
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研究分担者 |
佐藤 ちひろ 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 准教授 (10343211)
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キーワード | 糖鎖 / 発生・分化 / 生理活性 / タンパク質 / 再生医学 / 膜マイクロドメイン / 細胞接着 / 魚類 |
研究概要 |
1.Le^X-gpの細胞接着機能とその分子機構の解明:まず、メダカLe^X-gpのタンパク質部分およびその遺伝子の決定を行うために、メダカ胚を採取し、Le^X-gpの精製を行った。次に、そのアミノ酸配列解析をEdman分解と質量分析によって徹底的に行ったが年度内では同定に至らなかった。おそらく糖鎖含有量が高く、糖鎖が密集しているために、タンパク質部分の情報が隠れてしまっている空であると考えられる。次に、Le^X関連糖鎖合成プローブの初期胚へ投与実験を行ったところ、きわだった効果は観察されなかった。Le^X関連糖鎖の合成プローブ上の多価性、反復性問題で効果が見えなかったと推定している。一方、フコース転移酵素のノックダウン実験を行い、後者では発生異常を示す結果も得られ再現性を調査中である。また、種を超えたLe^X-gpの存在を調べるために、ゼブラフィッシュLe^X-gpの探索を行ったところ、Le^X構造はもたないものの高分子領域に特徴的な糖タンパク質の存在が示唆された。糖鎖構造は異なるものの、種を超えて初期胚に存在する可能性が高いと考えられる。 2.hyosophorinの細胞増殖促進とその分子機構の解明:hyosophorinの細胞増殖シグナルを解明するために、hyosophorin添加時の細胞増殖促進を阻害する種々のリン酸化酵素阻害剤の探索を開始したが、年度内には特定分子の同定に至らなかった。また、hyosophorin糖鎖に作用して糖鎖構造を改変する酵素を選び、それを囲卵腔注入して個体レベルの効果を調べたところ、囲卵腔注入によって発生異常を起こすものを見いだした。現在、これがhyosophorin特異的であるかどうかを検討中である。ゼブラフィッシュhyosophorinの同定のために材料を収集し、その精製を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、Le^X-gpについては、構造決定には至らなかったものの未知な性質をもつ糖タンパク質Le^X-gpに対する基礎的知見がえられたため。次に、hyosphorinについては、今回初めて試みたノックダウン動物を使用した結果から、糖鎖の重要性を示す結果が得られつつあるから。
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今後の研究の推進方策 |
まず、Le^X-gpについては、Le^X関連糖鎖合成プローブ、フコース転移酵素ノックダウンメダカを用いて、機能解析を昨年度に引き続き継続する。新しい試みとして、Le^X構造とE-cadherinの関連性をLe^X-gpとE-cadherinを単独あるいは同時に発現する細胞を入手して明らかにすることによって、Le^X-gpの構造と機能の普遍性と特殊性を解明する。次に、hyosophorinについては、その細胞増殖シグナルの解析を引き続き行う。また、最近確立した囲卵腔注入法(種々の試薬を直接胚胎外の空間に注入する方法)をもちいて、hyosophorin糖鎖特異的抗体の受精時および発生に及ぼす効果を個体レベルで評価する。あらたに、ゼブラフィッシュhyosophorin(zhyo)の精製とそのメダカにおける機能補完の有無を調べる。これらから、貴重な情報が得られると考えている。
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