研究概要 |
本年度は,光学活性アレン類の合成に関する研究を行い,以下のような成果を得た. (1)アルキニルシランの不斉還元 以前われわれが開発したホモキラルなリチウムアミドを用いるMeerwein-Pondorf-Varley型の不斉還元を,アルキニルシランに適用したところほぼ完壁な選択性でホモキラルなα-シリルアルキニルアルコールを得ることができた. (2)α-シリルアルキニルアルコールの1-シロキシアレンへの変換 ホモキラルなα-シリルアルキニルアルコールにtert-ブタノール中t-BuOLiを作用させたところ,シリケート中間体からBrook転位を経て光学活性アレンが高い不斉収率で生成することが判明した.また,本反応の立体過程がアンチ型で進行することもわかった (3)タンデム[不斉還元/シロキシアレンへの異性化] 上記(1)の反応を低温下(-80℃)トルエン中で行い,その後THFを添加して-20℃まで昇温することにより(1).(2)の反応を連続的に行なわせることに成功した. (4)タンデム[不斉還元/シロキシアレンへの異性化/[4+2]環化付加] (3)の反応の基質としてエニノイルシラン(enynoylsilane)を用い,生成した光学活性1-シロキシビニルアレンに対し,ワンポットで無水マレイン酸のようなジエノフィルを添加し室温まで昇温したところ,不斉還元,Brook転位,イン-アレン異性化,[4+2]環化付加が連続的に進行し,高い光学純度で多官能性の環化付加成績体が得られた.ここで注目すべき点は,シロキシアレンへの付加環化が立体障害が大きいと考えられるシロキシ基の側からおこっていることで,これまでの常識を覆すもので極めて興味深い結果である,シロキシ基をメトキシ基にかえたもの(別経路で合成)を使用すると付加環化の選択性はなくなり,一方アルキル基の場合には,選択性が逆転した.
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