研究概要 |
前年度の検討において,キラルリチウムアミドによる不斉還元を利用することによりアルキニルシランを効率良くホモキラルな1-シロキシアレンに変換する方法論の開発に成功し,その成果を学術論文にて発表した.本年度は,本方法論の適用範囲のさらなる拡大を目指し検討を行った結果,以下のような成果が得られた. (1)インエノイルシランの光学活性アレンへの変換と[4+2]環化付加反応 これまでの基質の二重結合と三重結合の位置関係を逆にした化合物であるインエノイルシランをキラルリチウムアミドで処理すると,エノールシリルエーテルを有するアレンが得られた.その際,E体の原料からはZ体の,Z体の原料からはE体のエノールシリルエーテルのみが生成することが明らかになった.そこでZ体の原料を用い,生成した光学活性アレンに対してワンポットでN-メチルモルホリン(NMM)を加えたところ,[4+2]環化付加が連続的に進行し,高い光学純度で多官能性の環化付加成績体が得られた. (2)α-ハロアクリロイルシランのシロキシアレンへの変換 α位に脱離基であるハロゲンを有するアクリロイルシランをキラルリチウムアミドで処理すると,不斉還元/Brook転位/ハロゲンの脱離が連続的に進行し,シロキシアレンが得られた. (3)γ-ハロジエノイルシランの光学活性アレンへの変換 (2)で用いた原料のアシルシランと脱離基の間に二重結合を導入した基質をキラルリチウムアミドで処理すると,アクリロイルシラン部位がE体の化合物からはZ体のエノールシリルエーテルを持つアレンが中程度の収率で得られた.脱離基の種類(Br,I,OTs)を検討したところ,化学収率は影響をうけるが,エナンチオマー比はほとんど変化しない(70:30)ことが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいるγ-ハロジエノイルシランの光学活性アレンへの変換において,化学種率,不斉収率の向上を目指す.また,さらに複雑な系への適用,また,天然物の合成も視野に入れて研究を行う.
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