研究概要 |
これまでに,アルキノイルシランをキラルリチウムアミドで処理することで,Meerwein-Ponndorf-Verley型の還元/Brook転位/SE2’反応が連続的に進行してシロキシアレンが高エナンチオ選択的に得られることを明らかにしたので,本年度は本不斉還元反応をシリルイミンに適用することを検討した. シリルイミンを還元することにより得られるα-シリルアミンは合成中間体としても,生理・薬理学的な観点からも重要な化合物であるが,光学活性体の合成報告例はほとんどない.また,三重結合を有する基質を用いた場合にaza-Brook転位が進行すれば光学活性イミノアレンが得られる可能性もある. まず,還元により生じたアニオンが安定化されることを期待して窒素原子上にトシル基を導入した種々のシリルイミン(R(C=NTs)SiR’3, R = Ph, TMSCH=CH, tBuCH=CH, TMSCC, PhCC, Ph(CH2)3C, SiR’3=TMS, TBS, SiMe2Ph)をTHF中–80 °Cにおいてキラルリチウムアミドで処理すると,収率58-91%, エナンチオマー比 75:25-99:1で目的のα-シリルアミンが得られた.反応条件を精査する過程で,過剰のアミドを用いるかもしくは反応時間を延長することでラセミ化が起こることが明らかになった.また,イミノシランから反応系内で生成するリチウムアミドも還元剤として働く可能性があると考え,2種類の基質での交差実験を行ったが,交差化合物は得られなかった. このように,キラルリチウムアミドによる還元はイミノシランにも適用可能であり,高エナンチオ選択的にα-シリルイミンを合成可能であることが明らかになった.今後はaza-Brook転位を利用する光学活性イミノアレンの合成を検討していく予定である.
|