生体内ポリアミン類はタンパク合成、核酸合成の過程に影響を与え、細胞増殖の必須因子として、また癌との関連も指摘される生体物質である。しかし生理作用が広いために踏み込んだ研究は少ない。ポリアミン類を研究するに当たり、最も基本的な濃度の測定でさえ煩雑な操作と高価な装置を必要としているのが現状である。我々は生体試料を加えその呈色・発光の変化を測定するだけで、生体試料中に含まれるポリアミン(特にスペルミジンとスペルミン)の濃度を測定できる試薬の開発を目指している。従来用いていたフェノールフタレイン骨格をスルホンフタレイン骨格に変換した化合物1を合成し、その機能を評価した。化合物1とスペルミジンおよびスペルミンの会合定数はそれぞれ10の7乗の前半であり、従来合成してきたフェノールフタレイン型の化合物に比べて約1万倍の感度向上を達成した。メタノール中でのスペルミジンの検出限界は0.1μmol/l程度であり、当初の目標の感度をクリアした。今後は化合物1を用いて、実際の生体試料を用いて、スペルミジン、スペルミンを検出できるか否かを検討すると同時に、蛍光応答性分子の開発に挑む。
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