研究概要 |
本研究は,ナノモル濃度のリン酸化分子を選択的に捕捉できる蛍光発色団を有するオリジナルな分子(蛍光性フォスタグ)を用いた新しいリン酸化プロテオーム解析法の開発を目的としている。蛍光性フォスタグを用いた本手法は,従来のリン酸化分子の分析法(放射性同位体法,抗リン酸化抗体法,単核金属錯体法)と比較して,より網羅的かつ迅速なリン酸化反応解析を可能にし,簡便な操作性や安全性などの利点をもち,癌やアルツハイマーなどキナーゼやフォスファターゼの異常に起因する病態の治療薬や診断法の開発に役立つ革新的な分析技術である。本年度は,蛍光性フォスタグのリン酸化合物捕捉能と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理を組み合わせたペプチド基質のリン酸化反応の検出法を開発した。本研究では,水溶性スペーサーで蛍光色素を結合した新規蛍光性フォスタグの合成とその物性の検討を行った。その後,FRET法のドナーとしてアミノクマリンおよびフルオレセイン蛍光色素を結合させたフォスタグを,アクセプターとしてカルボキシフルオレセインまたはローダミンでラベルしたペプチド基質を用いて,キナーゼ反応解析法の検討を行った。ペプチド基質のリン酸化の進行に伴い,ドナーとアクセプターの接近に由来する効率的なFRET(50~80%)を確認した。その実験結果を応用して,リン酸化基質ペプチドの新しいり定量解析システムを開発した。さらに,リン酸化ペプチド基質のリアルタイム検出によるキナーゼ阻害剤の活性測定法も確立した。
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