研究課題/領域番号 |
22390007
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱瀬 健司 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (10284522)
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研究分担者 |
植田 正 九州大学, 薬学研究院, 教授 (90184928)
小柳 悟 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (60330932)
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キーワード | 分析化学 / メタボローム / アミノ酸 / 光学分割 |
研究概要 |
タンパク質構成全アミノ酸を含めて代謝マップ上で重要なアミノ化合物を選定し、「光学異性体を区別するアミノ酸メタボローム分析法」を進化させた。タンパク質構成アミノ酸の中で最も感度が低く、メタボローム解析推進の障害となっていたNBD-トリプトファンについては、移動相組成の最適化に加えてオンラインリアクターを導入することで120倍の高感度化を達成した。分析法としては、平成22年度までに開発した蛍光二次元HPLC法に加え、ギ酸含有移動相を導入することにより二次元HPLC-FL-MS/MS分析法の構築を行った。本法ではアミノ酸をNBD-Fにより修飾し、N-修飾体として二次元HPLC分離と蛍光・MS/MS検出を行う。一次元目の逆相カラムについては改良型キャピラリーモノリスODSカラムによる高性能分離を行い、各アミノ酸をD体、L体の混合物として分離する。光学分割についてはパークル型キラル固定相及び陰イオン交換型キラル固定相計23種の検討から、良好な結果が得られたカラムをオンラインで連結して全光学異性体の全自動二次元分離を達成した。疾病モデルマウスとしては、腫瘍細胞移植マウス、各種神経疾患モデルマウス、先天性代謝異常モデルマウスなどを作出して光学異性体を区別したアミノ酸メタボローム解析を行った。分析対象試料は血液、尿及び疾病組織を中心として選択し、各アミノ酸光学異性体の含量変化を検討した。その結果、運動神経障害である筋萎縮性側索硬化症において他のD-アミノ酸含量には大きな変化が認められない中でD-セリン含量が特異的に上昇することが示された(連携研究者である慶應大学医学部・相磯貞和との共同研究成果)。また、先天性アミノ酸代謝異常症において光学異性体の識別定量が早期・高精度診断に有用である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した通り、光学異性体を区別するアミノ酸メタボローム分析法の高性能化を達成している。また、各種疾病モデルマウスの作出と、これらを利用するメタボローム解析から新たな高精度診断、早期診断への可能性が示された。従って本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した通り、各種疾病モデル動物を利用し、光学異性体を区別するアミノ酸含量解析を推進する。また、実際のヒト疾患試料を用いるキラルアミノ酸メタボローム解析を行う。併せて、タンパク質中のアミノ酸光学異性体、D-アミノ酸残基生成の解析を可能とする一斉分析法の開発を行うと共に、本法を用いる劣化タンパク質の解析を試みる。また、D-アミノ酸含量変化を増幅するモデルマウスとして、D-アミノ酸酸化酵素・D-アスパラギン酸酸化酵素二重欠損マウスの作出を行う。
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