研究課題/領域番号 |
22390008
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山縣 ゆり子 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (40183678)
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キーワード | タンパク質の結晶化 / シグナル伝達 / 構造生物学 |
研究概要 |
本研究の目的は、生命現象の解明や創薬の標的としても注目されているサイトカインの働きを細胞外レセプターとの結合様式に始まり、細胞内でのシグナルの伝達機構を原子レベルで解明し、生命現象の本質を物理と化学の言葉で理解すること、並び創薬へ応用することである。前年度に細胞外のTNFとTNFRの複合体と構造を報告できたので、本年度は細胞内でのシグナル伝達について、TNFレセプターファミリーと自然免疫に関わるToll様レセプターファミリーの両方からのシグナルを伝達する働きをもつTRAF6とその結合タンパク質TRAF6BP複合体とTRAF6BP単独のX線結晶構造解析に集中した。昨年度に引き続きそれぞれ、確立した大量調製法を基に、本年度もさらに立体構造的な純度を指標に種々改良を加えた。TRAF6BP単独については幾つかの条件で結晶の再現性は得られるようになったが、まだ構造解析可能な大きさになっていなかったので、Seeding法や回転法、フェムト秒レーザー照射法により結晶を大きくする工夫を行ったが、良好な結晶は得られなかった。その後、長期の保存でタンパク質のC末端側にわずかだが分解が起こることが判明しため、タグの位置を変更しタグを切断せずに結晶化の試料とした。約1000種の結晶化条件でスクリーニングを行ったところ、幾つかに結晶が得られ、2つの条件の最適化で放射光を利用すれば回折データ収集可能な大きさの結晶に成長した。そこで、PFにおいて天然型結晶のデータ収集を行い、現在、類似の構想解析例がない場合の解析法である単(多)波長異常分散法での解析を行うために、SeMet化結晶の調製を行っている。複合体の結晶化についても、TRAF6BPについては結晶が得られたC末タグをもったTRAF6BPに変更し、これとTRAF6Cの複合体について、pH9や7を中心に結晶化スクリーニングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRAF6BP単独については放射光を利用して天然型結晶のデータ収集を行い、現在、類似の構想解析例演ない場合の解析法である単(多)波長異常分散法での解析を行うために、SeMet化結晶の調製を行っているので、近々構造解析に成功すると思われる。複合体についても、TRAF6BPの結晶化試料を変更したので、良好な結晶ができると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はSeMet化結晶のデータ収集を行い、単(多)波長異常分散法で解析を行う。複合体については結晶が出来れば、先に解析するTRAF6BP単独の構造を利用して分子置換法で容易に構造解析できる。結晶ができない場合でも、解析するTRAF6BP単独の構造とすでに構造解析されているTRAF6Cの構造(Nature, 2002)から複合体モデルを作成し、シグナル伝達機構を推定することが可能となる。
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