研究課題/領域番号 |
22390012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松木 則夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (70126168)
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キーワード | コルチコステロン / シナプス伝達 / ストレス / Arc / 学習 |
研究概要 |
学習に関わった神経細胞の可塑性解析 前年度に引き続き、Arc-Venusトランスジェニックマウスを用いて実験を行った。恐怖条件付け学習課題を行ったマウスから脳切片を作成することにより、学習課題に伴って活動した神経細胞を可視化して、パッチクランプを行った。既に、自発的なシナプス後電位と後電流の解析から、恐怖条件付けで活動したシナプスの前終末から伝達物質の放出確率が上昇し、自発的シナプス伝達の亢進を明らかにしている。本年度は、我々が見つけたシナプス伝達効率の上昇が、連合学習依存的であるかを検討した。その結果、マウスを新奇環境に入れた直後に電気ショックを与えた群では、シナプス伝達効率の上昇が起こらないことを確認できた。 扁桃体機能に対する慢性ストレスの影響 ストレス状態では知情意の慢性的な抑制がかかり、海馬の機能も低下する。慢性ストレスを再現よくマウスに与えるのは難しいが、20日間に渡り飲料水にコルチコステロンを混ぜることで、慢性ストレス状態を作出できた。この慢性ストレス動物がうつ様症状を呈していることを確認した。また、扁桃体神経細胞の形態をBLAを中心に解析したところ、予想に反して樹状突起の分岐数や総延長が増加していることが分かった。この影響は、コルチコステロンの投与を休止した後も少なくとも20日間は持続していた。うつ様症状と形態変化にはミネラルコルチコイド受容体が関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シナプス可塑性の電気生理学的解析は、実験を担当する大学院生が卒業により交代したが、実験主義を継続することができ、続きの研究が順調に行われている。また、慢性ストレスモデル動物の作出にも成功し、ぞくぞくと興味深いデータが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定には無かったが、慢性ストレスモデルが再現性よく作出できることが分かり、それを使用した研究も発展させていく予定である。
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