【学習に関わった神経細胞の可塑性解析】 前年度に引き続き、Arc-Venusトランスジェニックマウスを用いて実験を行った。恐怖条件付け学習について、獲得時の神経活動に比べ、記憶の消去時の知見が少ないので、消去に絞って解析を行った。消失トレーニングにより、恐怖記憶が消去されることを確認したマウスから脳切片を作成し、下辺縁皮質ニューロンにパッチクランプ法を適用して電気生理学的な解析を行った。その結果、恐怖記憶の消失時には下辺縁皮質ニューロンの内的興奮性が上昇しているが、シナプス入力には大きな変化がないことを見出した。入力抵抗が上昇していたが、静止膜電位には変化がなかったことから、整流性チャネルの変化が推定された。 【扁桃体機能に対する慢性ストレスの影響】慢性ストレスとして、持続的なコルチコステロン投与マウスを用いると、うつ様行動が惹起され、扁桃体神経細胞樹状突起の分岐数や総延長が増加していることを既に示している。予想に反した結果なので、その他の慢性ストレスモデルについても検討を行った。物理的ストレスや社会的ストレスについて様々な検討を行ったが、残念ながら報告されているようなうつ様・不安様行動は惹起できなかった。 【末梢性ストレスが記憶・学習に及ぼす影響】末梢性ストレスとして、マウスの腹腔内にリポポリサッカライドを投与するモデルを作成した。このモデルを用いて、局所的な急性炎症が受動的回避学習課題遂行能力を低下させることを見出した。
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