研究課題
ヒトは食物として摂取した総エネルギーの約60%を費やすことにより体温調節を行っており、エネルギー代謝系と体温調節系の連携の破綻が様々な代謝疾患を引き起こす可能性が指摘されている。しかし、エネルギー代謝系と体温調節系の両システムがどのような分子機構で協調・連関して働いているのか、その実体は明らかではない。本研究では、エネルギー代謝系と体温調節系を結ぶ分子経路の実体をショウジョウバエの分子遺伝学的手法を駆使して明らかにすることを目的に研究を進めた。これまで,エネルギー代謝の亢進により低温選択行動を誘導することを明らかにして来たが (Science 323:1740, 2009)、今回、ショウジョウバエのインスリン経路を阻害することによりエネルギー代謝を抑制すると高温選択行動を誘導することを見出した。これらの知見より、ショウジョウバエ幼虫は体内のエネルギー代謝レベルに呼応して適正な温度環境を選択することが明らかとなった。さらに、膜脂質に不飽和結合を導入して細胞膜の流動性を調節するΔ9脂肪酸不飽和化酵素desat1の発現抑制によっても顕著なエネルギー代謝の抑制と高温選択行動の誘導が観察された。次に、膜脂質流動性と体温調節の関連を検討する目的で、リノール酸産生に関わるΔ12脂肪酸不飽和化酵素をコードする線虫のfat2遺伝子を導入した遺伝子組み換えショウジョウバエを作製した。組織特異的にFAT2を強制発現した個体の温度選択性を詳細に解析した結果、脂肪体でFAT2を発現した場合にのみ、顕著な低温選択性が誘導された。また、この低温選択性は、脂肪体におけるAKT1の発現抑制により阻害されることも明らかとなった。これら一連の解析により、脂肪体における膜脂質の代謝・脂肪酸組成の変化がインスリン経路を介して温度選択行動に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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