研究課題
リーリンC末端領域を欠損するノックインマウス(DC-KIマウス)を作成した。胎生16日目および生後0日目におけるDC-KIマウスおよび野生型マウス大脳皮質の層構造を、層特異マーカーを用いた免疫染色により解析した。2-5層マーカーであるBrn1、および6層マーカーであるTbr1で、2-4層マーカーであるCux1で染色した結果、明らかな異常は見られなかった。すなわち、リーリンの機能低下は、胎生期においては、大きな異常を引き起こすことはないと考えられた。一方生後7日目では、DC-KIマウスでは野生型マウスに比べ辺縁層が狭くなっていることを見出した。またDC-KIマウスでは4層付近にクラスター化した細胞がみられた。これらの細胞はCux1及びCtip2陰性であった。辺縁層が狭くなること、クラスター化した細胞がみられることは領域特異的に起こっていた。クラスター化した細胞は核が小さく凝集しておりアポトーシス途中の細胞のようにも思われたが、そうではないことも判明した。リーリンの分解制御機構を開明するため、リーリン分解酵素の同定を試みた。プロプロテインコンベルターゼ(PC)ファミリー阻害下では活性が検出されないことと、ヘパリンに強い親和性を持つメタロプロテアーゼであることが判明し、ADAMTSファミリーがその有力な候補と考えられた。そこで、このファミリーに属する分子を数種クローニングし、それぞれHEK293T細胞に発現させ、リーリン分解活性を検討した。その結果、少なくともADAMTS-4がリーリンをN-t siteで分解できることを見出した。また、N-t site分解が特定のプロリン残基のC末端側でおきること、および、この残基に変異を導入するともはや分解を受けないことも見出した。さらに、N-t site分解を受けていないリーリンだけを認識するモノクローナル抗体の樹立に成功した。
2: おおむね順調に進展している
新規遺伝子改変マウスを用いた、生後におけるリーリン機能低下の影響解明はほぼ完了に近づいている。新規プローブを用いたリーリン標的部位の時空間的解明については、リン酸化特異的モノクローナル抗体の樹立が難航しているが、これは織り込み済みである。細胞外環境におけるリーリンの分解(不活化)機構とその生理的意義の解明に関しては、ほぼ順調に進んでいる。
計画最終年度であるので、成果を論文化し発表していく。遺伝子改変マウスについてと、リーリン不活化機構については既にその段階にあるが、リーリン標的部位の可視化については現在実験進行中であり、年度前半までにめどをつけたい。
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