研究課題
スフィンゴミエリン(SM)は哺乳動物細胞の細胞膜における主要な脂質であり、細胞膜上でマイクロドメインを形成している。本年度は哺乳動物細胞の細胞質分裂時におけるSMの動態、および機能を解析した。SMに特異的に結合するライセニンと蛍光タンパク質との融合タンパク質を大腸菌で発現、精製し、細胞の外側から染色した結果、細胞質分裂時には、ライセニンは細胞膜の外層の分裂溝に多く染色が見られた。次に、スフィンゴミエリナーゼ処理によってSMを細胞膜から減少させた時の表現型を調べたところ、細胞質分裂は開始するものの完全には終了せず、細胞は2核になることがわかった。SMを減少させた細胞で、形質膜内層のホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(以下、PIP2)の局在を調べた結果、PIP2の局在が異常になっていた。一方、PIP2の量を減少させた細胞でも、スフィンゴミエリンは分裂溝に局在した。超解像顕微鏡のひとつであるPhotoactivation Localization Microscopy (PALM)を用いてSMとPIP2の局在を細胞膜上で調べた結果、外層のSMのマイクロドメインの直下の内層にPIP2のマイクロドメインが形成されていた。SMを減少させた細胞では、PIP2のマイクロドメインが形成されない。以上の結果から、SMはPIP2のマイクロドメイン形成に必要な因子であり、細胞質分裂時にはSMが分裂溝へ集積することによってPIP2が分裂溝へ集積することが示唆された。PIP2は細胞分裂に必須な低分子量Gタンパク質であるRhoAの細胞分裂時における分裂溝への集積に必要であることが報告されている。実際SMを減少させた細胞ではRhoAの集積が見られなくなる。これらの結果は形質膜外層のSMマイクロドメインが形質膜内層のPIP2ドメインの形成を介して細胞分裂を制御していることを示唆している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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