研究課題
化学療法剤による「がん」の治療は、外科手術、放射線治療と並ぶ代表的な治療法の一つであるが、正常細胞と元は正常細胞であったがん細胞を薬剤に区別させるのは困難であり、副作用が多いことが問題点の一つである。このことから、新たな作用メカニズムを有する抗がん剤の開発が望まれている。研究代表者らは、熱帯・亜熱帯産のバンレイシ科植物より単離され抗腫瘍活性を示すポリケチドであるアセトゲニン類に着目し、それらをシードとする新規抗がんリード化合物の開発研究に取り組んでいる。アセトゲニン類のラクトン環部分は酵素と相互作用する部位であると考えられており、その部位へフッ素原子を導入した誘導体を合成し、その生物活性を評価すれば、新規な抗がんリード化合物の創出に繋がるだけでなく、アセトゲニン類の作用機序の解明の一助になることが期待された。このような背景のもと、研究代表者らは前年度までに、ラクトン環上のC35位メチル基にフッ素原子を導入した3種のフッ素化アナログ(C35-fluoro-solamin、C35-difluoro-solamin、C35-trifluoro-solamin)の新規合成経路を確立することに成功した。平成24~25年度は、まず、確立した経路により生物活性試験に必要な量の化合物の合成を検討した結果、充分量のサンプルを得ることに成功した。また、C34位の立体化学が生物活性に及ぼす影響を調査することを目的に、2種の誘導体(C34-epi-solamin、C34-epi-C35-trifluorosolamin)も合成した。合成した5種の誘導体のミトコンドリア複合体I阻害活性を評価した結果、フッ素原子一つの導入は酵素活性の向上をもたらす一方で、複数個の導入は減弱を招くこと、また、C34位の立体化学の反転は顕著な活性低下をもたらすことが明らかになった。更に、ヒトがん細胞に対する増殖抑制活性についても評価した結果、酵素阻害活性の結果と同じ構造活性相関を示す結果を得た。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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