研究課題/領域番号 |
22390023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東 伸昭 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (40302616)
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キーワード | 微生物・感染症学 / 細胞外マトリックス / ヘパラナーゼ / ヘパラン硫酸 / 炎症 / マスト細胞 / 好中球 / 敗血症 |
研究概要 |
トリプターゼ、キマーゼ等のプロテアーゼは結合組織型マスト細胞の炎症、感染応答において機能する。これらプロテアーゼは分泌穎粒内に貯蔵され、刺激に応じて放出される。この穎粒内の主要成分は硫酸化糖鎖ヘパリンであるが、穎粒内で切断・低分子化されることが知られていたものの、生理的意義は不明であった。このヘパリン低分子化の意義を、結合組織様の細胞外マトリックスという場での機能を考え、検討した。 MSTマストサイトーマのヘパラナーゼ遺伝子強制発現株を作成し、穎粒内ヘパリンが10kDa程度に低分子化されていることを確認した。ヘパラナーゼ発現細胞と対照細胞の間で穎粒内物質の蓄積に大きな違いは認められなかった。結合組織型マスト細胞が分布する環境を模倣し、脱穎粒で放出された穎粒内物質のコラーゲンゲルからの放出を検討した。ヘパラナーゼ発現細胞は放射標識ヘパリンを放出し、この放射活性は対照細胞のものよりも有意に高かった。この違いは浮遊培養では認められなかった。培養上清から調製したヘパリンをコラーゲンゲル作製時に添加し、その自発的放出を検出した。上清に放出される放射活性の割合はヘパラナーゼ発現細胞由来のヘパリンの方が有意に高かった。他の穎粒内物質として、キマーゼの放出がヘパナラーゼ発現細胞で有意に高いことを見出した。再構成したキマーゼ・低分子量ヘパリン複合体のコラーゲンゲルからの放出も、キマーゼ単独、高分子量ヘパリンとの複合体に比べ有意に高いことを確認した。 ヘパリン・コラーゲン間の相互作用により、穎粒内物質の結合組織内の拡散が調節されること、ヘパリン切断という現象が穎粒内物質の放出後の組織内挙動を調節する上位因子として機能することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災の影響があり、進行が少し遅れていたが、マスト細胞における研究成果が投稿可能になるところまでまとめられてきた。
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今後の研究の推進方策 |
マスト細胞については、他の生理活性物質、特にサイトカイン・ケモカイン類の放出への影響について、Bioplexを含めた網羅的解析を試み、解明をすすめる。また、敗血症モデルにおけるヘパラナーゼの発現とその機能については、検出系の有効性を確認するとともに、疾患の進行におけるこの酵素の関与の有無を検討する。
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